警視庁万世橋署捜査本部の9日の調べで、加藤容疑者は凶器のダガーナイフを福井市内で購入したと供述。マニアに有名なミリタリーショップで6日昼、ダガーナイフなど計6本と皮手袋、警察官らが持つ特殊警棒を計約3万5000円で購入していた。「インターネットで調べて静岡から来た」などとニヤけながら店長と話す様子が防犯カメラに映っている。ナイフを手に「やっぱり両刃じゃないとな…」と知ったかぶりをかましていたとの情報もある。
凶器は刃渡り13cm、全長23cmの米スミス&ウエッソン(S&W)社製ダガーナイフ。サバイバルナイフではなく、より刺殺や投てきに向く殺傷力の強い武器だった。
秋葉原で銃刀剣類の精巧なレプリカを販売する「武器屋」は事件現場とは数十メートルの距離。同店を運営するヴァイスブラウプレジデンツの磯野圭作代表取締役は「ダガーはものを刺すのに適しており、人を殺すための武器。ナイフでするような作業には向かない。鋼鉄でつくった刀剣を売るべきではない」と語気を荒げる。
古今東西の武器・防具の研究家で著作もある磯野氏によると、ダガーナイフとは本来ありえない言葉という。ナイフは本来作業用のため片刃で下向き。ダガーは抜き身の両方が刃になっている。グリップの中心線がブレード(刃)の真ん中までまっすぐ伸びているのが武器の証で、兵士がブーツにしのばせることからブーツナイフとも呼ばれるという。
「非常に殺傷能力が高い。刃がギザギザのサバイバルナイフで次々と人を刺すと、1人目で刃を抜きにくくなる」
銃刀法では刃渡り15cm以上のものは刀剣類に入る場合があり、無許可所持を禁じている。この基準は致命傷となりうるかで定められているといい、磯野氏は一定の販売規制が必要とみている。刃渡りが6cmを超えると正当な理由なく携行できないが、理由などいくらでもごまかせるからだ。
S&W社製ダガーは今年3月に輸入されるや即効で売り切れたという人気商品。定価5250円で販売されている。中国・台湾製ダガーならば2000円程度で手に入る。銃刀法基準を下回るサイズで盲点をつく“無法品”がまん延している。
加藤容疑者は5月下旬ごろ、秋葉原では有名な同店を訪れていた。実際に使用できる刃物は同店には置いていないため、400円のペーパーウエイトを購入して帰ったという。ネットに「武器屋に行った。本当の武器屋だった」などと書いていたらしい。