「馬が本当に変わった」。出川克師と石崎駿騎手は口をそろえてこう話す。具体的には、師は「馬体」の変化を。ジョッキーは「レースぶり」の変化を挙げた。
馬体についてトレーナーは大井から転厩してきた今年初旬、「環境の変化もあってか、少し神経質でカイ食いが細い。何とか馬体をもう少しふっくらさせたい」と話していた。試行錯誤しつつじっくり時間をかけ、現在は「ふっくらして落ち着きが出たし、本当に良くなったと思う」と目を細める。実際の体重に大きな変化はないが、パンと張ったトモなど全体に実が入ってグラマーになった。
フィジカル面の強化は同時にメンタル面にも好影響を与えた。レースでは「昔は砂を被ると全然ダメで、逃げか外からマクってた」と振り返る鞍上だが、「今は砂を被っても全然大丈夫」と厚い信頼を置く。強靭な精神力が備わったノーヴァは、初重賞制覇となったしらさぎ賞で、泥を思い切り被りながらもインを突き抜ける会心の勝利を挙げた。
ここに向けての臨戦過程もすこぶる順調だ。6月30日、船橋競馬場で行われた最終追い切りでは、単走で終い重点に追われ、5F64秒1→50秒2→36秒9→12秒0(左回り・稍重)を計時。「今までで一番いいと思う」と自ら手綱を取った石崎駿騎手も太鼓判を押した。
心身ともにひと回り成長し、熟女の魅力を開花させたノーヴァ。しらさぎ賞→スパーキングレディC→トゥインクルレディー賞→TCKディスタフへと続く牝馬重賞戦線の主役の座へ、一気に駆け上る。