しかし、実はコレ(写真参考)、「たなべぇサンド」ではないのだ。「え? どういうこと?」と思われるだろうが、正確に言うと「たなべぇサンドの一種」なのだ。その理由は、「たなべぇサンド」の定義が「梅を使ったサンドイッチ」という、かなりアバウトというか幅の広いものなので、各店ごとにパンの種類から中の具財、その形状など、皆バラバラなのだ。梅が使われているという以外、何の統一性もない。
各店舗ごとに工夫を凝らし、とても美味しいものになっているのだが、「たなべぇサンドって、どんなもの?」という質問に答えるのには、いつも困ってしまう。なにせ、ハンバーガーのようなものからスタンダードな薄切りの食パンを使ったもの、中にはフォッカチャのような変り種まであるのだから…。
しかし、これだけではない。以前に「あがら丼」というものも販売していたのだ。「あがら」とは田辺弁で「私達」という意味で、あがら丼とは「私達のご飯」という意味になるのだが、これもまたどんぶりの定義が広く、「地元の食材を使って作るどんぶりご飯」ということで、これもまたまた各店舗にお任せだったので、各店舗ごとに色々な種類の「丼」が存在する。新鮮な海鮮から、地元の和牛を使ったものから様々だ。
どれも美味しいのだが、ちょっと値段が高く、気軽に食べようとは思えない。とにかく種類がありすぎる。百歩譲って、色々な味を楽しめると思ってみても、結局のところ、なんの捻りもインパクトもないただの海鮮丼を「あがら丼」とグループ分けをしただけなので、ご当地グルメといってよいのかは分からない。
では「あがら丼」は海鮮丼なのか? というとそうでもなく、ロコモコのようなものや、鳥肉を使ったようなものまであるのだ。もし、B級グルメコンテストのようなものに「あがら丼」がエントリーするならば、数十種類全部を持って参加、ということになるのだろうか? それを考えると「たなべぇサンド」は一歩前進といったところか? 数多くの種類の競争の中から生き残ったものが定番になる可能性はあるし、一品としての主張も、オリジナリティもある。
さらにいうと、第三弾の計画も出ているのだ。ある食材を使うらしいのだが、この食材は他の地方では滅多に口にすることがなく、見た目のグロテスクさに反比例して非常に上品で美味な食材で、一度食べたらクセになるものだ。確かに上手くいけばちょっとしたブームの予感はあるのだが…。とにかく高級な食材で、地元の人間でも頻繁に食することもなく、定番的な家庭料理もない。ゆえに、「その食材を使った料理」というかなりアバウトな定義だけで、これもまた各店舗に調理法をまかせた状態なのだ。店の数だけ「味」がある、のならよいのだが、店の数だけ「種類」があっても、地元に根付き難いだけなのではないだろうか?
はたして、紀伊田辺、ご当地グルメが他県に向かって発進される日が来るのだろうか? ただし、この見切り発車的なゴチャゴチャ感は他に見られないであろうから、興味のある方は全種類制覇にチャレンジするのもよいのではないか。
(sel 山口敏太郎事務所)
参照 山口敏太郎公式ブログ「妖怪王」
http://blog.goo.ne.jp/youkaiou