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やくみつるの「シネマ小言主義」 こりゃナイスまさかの“大きな”作品「バジュランギおじさんと、小さな迷子」

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提供:週刊実話

 幼い頃から声を出せないパキスタンの少女が、母親と一緒に来たインドで迷子になり、たった1人取り残されてしまいます。

 偶然出会ったその女の子を母親の元に送り届けるために奔走し、ついには厳戒態勢の国境をパスポートなしで越えてしまう、お人好しのインド人青年の話。

「親探し」は、昔からつい引き込まれてしまう設定ではありますが、実はこの映画はそんな娯楽映画の枠にとどまらない「デカい」テーマを表現しているところが驚きです。インドとパキスタンは長年、いがみ合った末に核兵器まで持ってしまっている隣国同士ですが、この現体制に「そんな対立はバカバカしい」ということを、かなりストレートな形で表明しているんですよ。インド映画定番の歌とダンスをふんだんに盛り込みながら、骨太な芯をちゃんと描いています。

 市井の人々のレベルでは、インドにもパキスタンにも、警察や国境警備隊やムスリムのモスクの中の異教徒にさえ、話せば分かり合える人がいることを伝える本作は、インド映画世界で興収歴代3位の大ヒットを記録しているようです。

 こんなメッセージ性のある映画が次々と作られていったら、ひょっとしたら、いつか「ベルリンの壁」のように、あの鉄条網が張り巡らされた国境とともに、対立する関係も解消するんじゃないかと希望を持ってしまいます。

 印パの国境って、飛行機からもはっきり分かるほど厳格ですが、ちょっとビックリしたのは、列車が普通に通っているところ。例えるなら、日本国内で乗った電車が北朝鮮のピョンヤン行きだった、みたいなものなんです。

 さて、主人公パワンを演じるのは、インド映画界で3大カーンと言われるスター、サルマン・カーン。肉体派アクションスターらしいガタイのよさと心優しい内面の対比がいい感じです。

 そして、5000人から選ばれた子役の可愛らしさといったらありません。表情と目だけで強い印象を残す小さな大女優を、よく見つけてきたなと思います。

 この映画は旅の映画でもあり、インドの街中だけでなく、砂漠や山や渓谷などで、ふんだんにロケが行われています。まるでスイスの山岳地帯のような絶景の山村が少女の故郷という設定ですが、実は、パキスタン北部は自分のような僻地マニアの間では人気のスポットなんです。

 とくに、「フンザ」という『風の谷のナウシカ』に出てくるような秘境は憧れの地。この映画を見て、やっぱり一度は行っとかなきゃな、と決意した次第です。

画像提供元:(c)Eros international all rights reserved (c)SKF all rights reserved.
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■バジュランギおじさんと、小さな迷子
監督/カビール・カーン 出演/サルマン・カーン、ハルシャーリー・マルホートラ、カリーナ・カプール、ナワーズッディーン・シッディーキー、シャーラト・サクセーナ、オーム・プリー 配給/SPACEBOX 1月18日(金)全国順次ロードショー。

■パキスタンの村に住む、幼い頃から声が出せない障害を持つシャヒーダー(ハルシャーリー・マルホートラ)は、インドのイスラム寺院に願掛けにやってきたが、母親とはぐれてしまい、インドに取り残されてしまう。そんなシャヒーダーが出会ったのは、正直者でお人好しのパワン(サルマン・カーン)。ヒンドゥー教のハヌマーン神の熱烈な信者であるパワンは、神の思し召しと、シャヒーダーを預かることに。そんなある日、彼女がパキスタンのイスラム教徒だと分かり驚がくする。長い年月、歴史、宗教、経済で激しく対立するインドとパキスタン。パワンはシャヒーダーを家に送り届けることを決意し、国境越えの2人旅がスタートするが…。

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やくみつる:漫画家。新聞・雑誌に数多くの連載を持つ他、TV等のコメンテーターとしてもマルチに活躍。『情報ライブ ミヤネ屋」(日本テレビ系)、『みんなのニュース』(フジテレビ系)レギュラー出演中

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