日本IBM最高顧問(当時)の大歳卓麻(おおとし・たくま)氏(63)が、JR駅構内で女性のスカート内を盗撮したとして、東京都迷惑防止条例違反容疑で警視庁四谷署の取り調べを受けていたことが明らかになった。
同署によると、大歳氏は8月22日午前8時頃、JR四ツ谷駅中央線ホームのエスカレーターで、動画撮影機能が付いたアップル社製の携帯音楽プレーヤー「iPod」を使い、前にいた若い女性のミニスカート内を盗撮した疑い。
すぐ後ろにいた男性が盗撮に気付き注意すると、改札の外で口論となり、通行人が通報。署員が駆け付け、iPod内から撮影した動画が見つかった。大歳氏はスーツではなく、普段着だった。
大歳氏は「盗撮に興味があった」と容疑を認めている。逃走の恐れがなく、女性から被害届も出ていないことなどから逮捕せず、同日に釈放。近く書類送検される見通し。
事件後、大歳氏は「個人の都合」として、最高顧問職を辞任した。大歳氏は日本IBM以外にも、三菱UFJフィナンシャル・グループ、明治安田生命保険、花王、TOTO、カルビーの5社の社外取締役も務めていたが、これも辞任。属していた経済同友会は退会。総務省の諮問機関、情報通信審議会の会長職も辞した。
日本IBMのみならず、日本経済界に大きな影響力をもっていた大歳氏は、東京大学工学部を卒業し、71年に日本IBMに入社。米IBM本社に赴任した際には、カリスマ経営者のルイス・ガースナー会長兼CEO(当時)の補佐を務めた。99年に社長に就任、08年に会長を兼務、09年に会長専任となり、今年5月に最高顧問に退いた。
日本IBMといえば、グループ企業を含めて社員2万人強を抱え、11年の売上高8681億3400万円(純利益272億7400万円)を誇る大企業中の大企業。会長の要職から下りたことで、気持ちが緩んでしまったのだろうか。やってはいけないことをしてしまった大歳氏は、経済界のトップの立場から転落した。
日本IBMは盗撮事件を起こした際は現職だったにもかかわらず、「退任しているのでコメントは差し控えさせていただく」としている。
(蔵元英二)