「今回のG1が、今まで参加したG1の中で一番印象に残って、一番尊い時間だったと胸を張って言えます。今まで何回も何回もG1出たけど、今回出なかったG1が一番印象に残るなんて思わなかったよ。それもこれも全部天山のおかげだ。自分が出場しなくたって、関わりを持っていればこんなに印象深いG1になるんだって思い知らされた。今回の事は死ぬまで一生忘れないと思います」
小島は天山の公式戦すべてに、セコンドについて檄を飛ばし続けた。開幕前に天山が「テンコジで闘う」と言っていたが、小島もセコンドにつくことでG1に“参加”していたのは事実である。今までで一番印象に残ったG1だったとまで小島に言い切らせたのは、「最後のG1」を掲げて挑んだ天山の頑張りがあったからである。
天山の成績は次の通りだ。
7・18札幌対 石井智宏 ○
7・23町田対 タマ・トンガ ○
7・25 福島対 丸藤正道 ×
7・28 所沢対 真壁刀義 ×
7・31 岐阜対 オカダ・カズチカ ×
8・3 鹿児島対 バッドラック・ファレ ×
8・6 大阪対 後藤洋央紀 ×
8・8 横浜対 棚橋弘至 ×
8・12 両国対 SANADA ×
開幕の石井戦でゴツゴツした試合を制し、タマ・トンガにも危なげなく勝利を収め、順調な滑り出しかと思われたが、その後は7連敗を喫し、Aブロック最下位の4点で公式戦を終了した。しかし、7・25福島大会での丸藤戦では、近年の天山の試合ではベストバウトと言っても過言ではない激戦を繰り広げており、勝った丸藤も「あの世代の人はなんであんなに元気なんだ?」と舌を巻いていた。また決勝進出の夢が途絶えた後藤戦の試合後には、大阪のファンが惜しみない拍手を送り、中には涙を流しているファンもいた。
インタビュールームに現れた後藤は「プロレスラー天山はまだ這い上がる力がある」とかつての師匠にエールを送っている。公式戦最終日に初対決し、普段はあまりコメントを残さないSANADAも「今日は『最後のG1』と言って出場した天山広吉に勝って、世代交代のようなものを見せられたんじゃないか」と天山と対戦して勝つことができた意義を感じていたようだ。
その他の会場でも天山の人気は尋常じゃなかった。今年のG1で多くのファンが天山の姿に浪漫を感じたのは間違いない。「最後のG1」と言って挑んだ以上、これが最後の出場になってしまう可能性は極めて高いが、天山自身も「まだまだやれる」という自信を深めたシリーズになったのではないだろうか。それほど、今回のG1は天山にパワーを与えていた。そして、天山の闘いを近くで見続けた小島も大きな力をもらったのではないだろうか。G1で天山コールを送ったファンのためにも、またテンコジがタッグのベルトを巻く姿を見せてもらいたいし、いつまでも強がってるテンコジであってほしい。
大会終了後、天山に挨拶をすると「またここから頑張りますよ」と力強く話してくれた。
テンコジによる「浪漫の夏」が終わったが、ここから這い上がっていく二人に期待せずにはいられない。
(どら増田)
<新日Times VOL.31>