尾花高夫監督(53)の構想はランドルフ(36)を開幕投手に選ばざるを得なかった時点で、崩壊していたのではないだろうか。エース・三浦大輔(37)は調整に遅れ、開幕13試合目にやっと初登板。トレード獲得した清水直行(37)が踏ん張り、2ケタ勝利を挙げてくれたが、途中加入の大家友和(34)も7勝9敗と、救世主にはなれなかった。8月25日、12球団ワーストの早さで「2010年の負け越し」が決定。リーグワーストのチーム防御率4.88の投手陣を整備するのは必須だが、「どこから着手すべきか」も考えなければならないほど深刻な状況だ。
まず、ドラフト1、2位の須田幸太(24=JFE東日本)、加賀美希昇(22=法政大)の2人には当然、先発ローテーション入りしてもらわなければならないが、5位・大原慎司(25=TDK)も『チーム再建』のキーマンになるのではないだろうか。
昨季、横浜が挙げた48勝のうち、左投手による勝利は「5」。左投手の勝ち星が2ケタに到達していないのは、セ・リーグで横浜だけで、左投手が先発した試合は「23試合」しかなかった。こうした深刻な左腕不足を抱えていながら、ドラフト上位で右投手を獲得したのは「確実に勝ちを狙える投手」が欲しかったからだろう。「台湾代表左腕の陳冠宇の獲得に動いている」との情報もあるが(1月26日時点)、新人左腕の大原にも先発ローテーションの一角を任せることになるだろう。
首脳陣は2年目の筒香嘉智(19)を使う予定だという。筒香が二軍戦102試合で放った本塁打は26本。「飛ばす」ことに関しては、並みの新人ではないことが改めて証明されている。将来のため、たとえ打率2割を切るようなことになっても、筒香を起用し続けることに反対する関係者はいないだろう。
最下位脱出、チーム再建はやはり尾花監督の双肩に掛かっている。01年以降の歴代監督のなかで、3季続けて指揮を取った監督はいない。前任者の大矢明彦監督も3季目のシーズン前半に休養している。この2年ごとに指揮官が交代していた間に引退した横浜OBによれば、「就任1年目はチームを掌握するため、ベテランにすり寄らざるを得ない。2年目に手探りで若手を使っているうちに負けが込んできて、またベテランを使い…」と“悪循環”が続いたそうだ。他球団に聞いても、「監督交代で自然消滅したトレード話も少なくない」という。尾花監督に3季以上を託し、投手陣の再建に集中させるべきではないだろうか。
楽天からトレード補強した渡辺直人(30)はリーダーシップを持った人材だ。FAで獲得した森本稀哲(30)も同様で、規定打席に到達できなかった09年、それでもリーグ最多の43犠打を決めている。渡辺、森本が牽引役になれるかどうかにも、注目したい。(スポーツライター・飯山満)