「原(辰徳)監督の意向であり、選手も故人と一緒に(今季を)最後まで戦いたいと思っています」(関係者)
これも、故人の人柄だろう。
いずれは後任の『一軍・守備走塁担当コーチ』を見つけなければならない。12球団共通の悩みでもあるそうだが、内野守備に関する有能な指導者はかなり少ないという。昨季の日本シリーズ前、清武英利代表自らが故・木村コーチにその要請を行ったのもそのためだ。しかし、意外なところから“コーチの立候補者”が現れた。主砲、アレックス・ラミレス外野手(35)である。
「ラミレスは昨季の契約任期の更新交渉において、『将来は巨人コーチになりたい』と人生プランを伝えています。日本での2000本安打を達成させ、巨人OBとして引退後も日本で活動するつもり」(前出・同)
もっとも、ラミレスが狙っているのは『打撃コーチ』ではあるが、巨人選手からは「篠塚、村田両コーチより分かり易い」と、すでにティーチング能力には太鼓判を押されている。ヤクルトから移籍してきた08年シーズンから、ベテラン選手として後輩たちにアドバイスを送るシーンはよく見られた。外国人選手たちにも日本の習慣や球界情報をアドバイスし、原巨人には欠かすことのできない存在ともなっている。
古巣・ヤクルトの関係者もこう言う。
「ウチもラミレスとの交渉が切れる07年は、シーズン中から残留の方向で本人サイドに話をしてきました。でも、本人は『どうしても、巨人に行きたい』と言って…。対戦する側から巨人というチームを見ていて、興味を覚えたというんです。『あのチームは優秀な選手ばかりなのに、リーダーがいない。リーダーがいれば必ず優勝できる。そのポジショニングで自分を試してみたいんだ』と話していました」
ヤクルトとの交渉決裂直後(07年オフ)、ソフトバンク、オリックスなども交渉を持ち掛けてきた。巨人が提示した『2年総額10億円』(推定)巨人以上の好条件も提示されたというが、ラミレスの気持ちは変わらず、今日に至っている。
「再契約では、ラミレスは3年以上の複数年契約を希望し、過去、大型契約で失敗してきた巨人は単年プラスオプションを提示。折衷案で、2年契約となりました」(前出・関係者)
ラミレスが複数年契約にこだわったのは、巨人のユニフォームを着て『2000本安打』を達成させるため。平成22年4月21日時点でのラミレスの日本・通算安打数は1565本だから、『再々契約』の必要こそあるが、「2年契約の条件を受け入れたのは将来のコーチ就職のため、心象を悪くしたくなかった」(同)とも言われている。
「故・木村氏もそうだが、ラミレス、小笠原(道大)、谷(佳知)、大道(嘉典)などはチームに貢献してくれ、首脳陣、フロントのウケもいい。外様選手が引退後もチームに携わる新しいスタイルが確立しつつある」(同)
端的な分かり易い打撃アドバイスを送れるのは、チーム全体に目を光らせているからだろう。内野守備と打撃では担当セクションが異なるが、「チームのために尽くしたい」という気構えが生え抜き組からも聞こえるようになるといいのだが…。