日本プロ野球選手会の松原事務局長は異例の要請に関してこう語る。「選手によると、ナイター明けのデーゲームがとくにきついという。また見ているファンの人も大変そうだということだった。空調のあるドーム球場なら問題はないかもしれないが、屋外の7月、8月は勘弁してほしいということです。早めの申し出をしておかないと、来季の日程が決まってしまいますからね」
確かに、今年の猛暑、酷暑は記録的で異常だ。しかも、今年だけが例外なのではなく、日本の気候が温帯から亜熱帯化しているという見方もある。そうなると、日本のヒートアイランド状態は来年も続くわけで、選手会の素早い対応は当然かもしれない。
が、12球団側からすると、二つ返事で了承することはできない事情がある。土日のデーゲームは、観客動員の切り札的な存在になっているからだ。一昔前は「巨人はずるい。デーゲームをやらずに、すべてナイターだ。我々のように、ナイター翌日にデーゲームをやるチームと違って、選手のコンディションがいいのは当たり前だし、優勝するわけだ」と、セ5球団からクレームがついた巨人も、今は土日のデーゲームを売りの一つにしている。
かつては1試合1億円以上の放映権料を支払い、巨人戦を中継するので、「ナイターでないと視聴率が取れない。デーゲームはダメだ」と注文を出していたテレビ局が、「巨人戦は視聴率が取れない」と、撤退してしまったからだ。テレビマネーの入らなくなってしまった巨人とすれば、他球団同様に、土日のデーゲームを集客の目玉にするしかなくなっているのだ。
そういう事情があり、しかも空調のあるドームがOKで野外はノーとなれば、12球団の足並みが揃うか、どうか。「高い年俸をもらっているプロ野球選手が夏の猛暑のデーゲームが体調に響くから、やめてほしいというのも、考えてみれば、甘いのではないか」。球界関係者からこういう指摘もある。正論だ。
だが、最優先されるのは、高い入場料を払って球場まで足を運んでくれるファンの声だろう。帰宅時間を考え、試合途中で球場を後にする必要のない、土日のデーゲームは家族連れのファンにとっては、最高のサービスになっている。ファン、イコール神の声が「酷暑の屋外球場でのデーゲームはさすがに、見ている方も大変だ」となれば、選手会の要望を実現するのは当然だ。
逆に「真夏で暑くても家族での楽しみだから、土日のデーゲームは続けて欲しい」というのが神の声ならば、選手は黙ってプレーするしかないだろう。真夏のデーゲームの正否を決めるのは、選手会でも12球団でもない。プロ野球を支えているファンの判断だ。