三方出身の銀座スエヒロ創業者である、故石原仁太郎が開設した旅館で、古民家を移築した一軒宿。こちらにある温泉は、“日本秘湯を守る会”にも加盟しており、湖畔に湧き出る鉱泉を利用している。そして、何とこの宿には、あの“世界のサカモト”こと坂本龍一氏も訪れたことがあるとか。創作活動には相応しい場所なのだろうか。「サカモトさんは友達やさけ」と自慢げに語る宿主。 教授は宿の雰囲気が気に入ったそう。
料理も魚介類が美味しく、スタッフのおばちゃん達がスタスタと運ぶ。昭和43年の創業時から働く、キヨちゃんとミヨちゃん。何より元気で明るい。
それにしても、ここにいると時を忘れる。
目の前に広がる、鏡のような湖。時に魚が飛び跳ねる。山間に沈んでゆく夕日は優しく釣り人たちを照らす。
そして虹岳島に住み着くシャム猫親子のペーとポー。すべての風景が美しく懐かしい。
虹岳島荘に近い集落は、日本の里100選に選ばれており、三方五湖は、水鳥の生息地として、湿地の保存に関する国際条約である「ラムサール条約」にも登録されている。自然と動物が守られている里山。『静寂』という贅沢な時間を過ごすために、この虹岳島荘は、あえて時計を置かない。
時を忘れた教授は、ここで何を考えていたのだろうか。何を生んだのだろうか。
宿の玄関先にブリキの音楽隊が並んでいる。そこから世界のサカモトのメロディが聴こえてきた。
(「はぐれ旅ライター純情派」海飛車鱗(うみとしゃりん)山口敏太郎事務所)
参照 山口敏太郎公式ブログ「妖怪王」
http://blog.goo.ne.jp/youkaiou