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トライアウト受験の悲劇は解消されないのか…

 プロ野球の元旦が『2月1日のキャンプイン』ならば、現在行われている1月の自主トレは、年越しの準備期間ということになるだろう。マスメディアの関心は菊池雄星(18=埼玉西武)など有名新人に集まっているが、“新年を迎えられなかった面々”もいる。トライアウト受験に失敗した元プロ野球選手たちである。

 「阪神の今岡(誠)? テスト生として千葉ロッテのキャンプに参加することになっているが、『合格』の内定がでていると見てまず間違いないでしょう。フロントの信頼が厚い井口(資仁)が同い年ということで、強く推薦しているようだし」(球界関係者)
 今岡については、トライアウトを受験した当初、オリックス・岡田彰布監督が「晒し者にするな!」と古巣・阪神に噛み付いていた。その岡田監督の一喝が千葉ロッテを動かしたかどうかはともかく、大多数のトライアウト受験者は新天地を見つけることができなかった。何人かに取材してみたが、トライアウト受験者は大きく分けて、『2つ』に分けられる。1つは再起を目指し、必死になっている者。もう1つは、野球に見切りを付けるために受験した者。つまり、「何処の球団からもオファーがなかった」事実を自分自身に言い聞かせるためである。

 後者の受験者の心境も、分かる気がする。しかし、問題なのは前者である。トライアウトを取材したことのある者なら、分かると思うが、出場機会に恵まれれば、戦力として十分にやっていけそうな選手も少なくないのだ。あるプロ野球OBによれば、「もし他球団で再起したら、旧在籍チームの二軍指導者の引責問題に発展する」とし、故障や性格面におけるウソの情報を流すのだという。
 「首脳陣に嫌われただけで、解雇された選手いますよ」(同)
 もし本当なら、プロ野球の世界も、ビジネスマンと変わらない辛さがあるようだ。

 08、09年のセ・リーグ新人王は巨人から輩出された。その2人の受賞者、山口鉄也と松本哲也は『育成枠』から這い上がってきた。彼らの頑張りには頭が下がる思いだが、「70人まで」と支配下登録選手数を定めているプロ野球各チームは、新人を獲得するためには、その人数分の「支配下選手」を解雇しなければならない。
 昨秋のドラフト会議を見て、疑問に思うことがある。支配下登録する新人の指名を4、5人で終えておきながら、育成枠ドラフトに再び参加する球団もあった。支配下登録する選手にはそれなりの契約金も払わなければならないが、育成選手なら多少の支度金と年俸240万円で済む。人件費を削るための計略だとしたら、解雇を通告されたトライアウト受験者も納得できないだろう。
 育成枠の在り方に限らず、ドラフト会議後に行われるトライアウトの日程、アマチュア復帰のための条件緩和など、プロ野球は“年始”までに解決できなかった問題も少なくないようだ。(スポーツライター・美山和也)

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