昇進目安である「三役での直近3場所33勝」をクリアする「11勝」に向け、後が無くなっていた御嶽海。嫌な流れをなんとか断ち切ろうと、この日は立ち合いから左への変化を選択した。
しかし、対戦相手の魁聖が難なく対応したことにより、この選択は完全に裏目。一気に体勢不利となった御嶽海は、207kgの体重を誇る巨漢の圧力をモロに受け、最後は寄り倒しであえなく負けた。あまりにも痛すぎる5敗目に、国技館は大きなため息に包まれた。
初日から7日目までは「6勝1敗」と、大関昇進へ着実に歩みを進めていた御嶽海。しかし、それまでの姿がまるで嘘のように、8日目の勢(東前頭筆頭)戦からまさかの大崩れ。さらに、この間には白鵬、鶴竜の2横綱にも土をつけられてしまっている。数字・内容が伴っていないことを考えると、冒頭で用いた“かなり厳しい”という表現は“絶望的”という表現に置き換えてもいいかもしれない。
同日に白鵬が無傷の11連勝を飾ったことにより、2場所連続優勝も露と消えた御嶽海。その心情は察するに余りあるが、あまり落ち込んでいる暇もない。“終わりよければ全て良し”とするために、残る4番を精一杯取り切ってほしいところだ。
また、残り4日の成績次第では、次場所の九州場所に大関取りの望みがつながる可能性も出てくる。仮に今日の12日目から全勝を飾るとすると、場所後の最終成績は「10勝5敗」。「13勝2敗」だった先場所と合わせると合計勝利数は「23勝」となり、九州場所は2ケタ以上で目安クリアとなる。
一度は賜杯を手にした力士だけに、歯車が噛み合えば再び本領を発揮できるはず。今回の敗戦をきっかけに、いい意味での“開き直り”を見せてくれることを切に願いたい。
文 / 柴田雅人