「みんなが引導を渡してくる」
今年の『G1クライマックス29』を負け越しで終えた棚橋は、珍しく弱音を吐いた。昨年メインを務めた東京ドーム大会の試合後に「東京ドーム2連戦は俺が何とかします!」とまで言い切ったのが嘘のようだった。
ビッグマッチでゲスト解説を務めているときには「俺、何で解説してんだろう」と思ったこともあったようだが、この男のすごいところは常に“種まき”をしていること。6月の大阪城ホール大会で、試合後もオカダ・カズチカを襲撃し続けたクリス・ジェリコと乱闘し、爪痕を残したことが、今回、ジェリコ側からのアピールにつながり、棚橋にとって東京ドームにふさわしいカードが転がり込んできたのだから、さすがは棚橋といったところだろう。
「めっちゃ気になってるんで、この後(控室に)戻ってみようと思ってます」
今から2年前、ジェリコがケニー・オメガとドリームマッチを行うため、新日本の東京ドーム大会に参戦したとき、棚橋は満身創痍。まだモンスター化する前のジェイ・ホワイトの凱旋試合の相手を務め、ハイフライフローで勝利を収めた。インタビューブースで質疑応答が終わった後、雑談の中で「クリス・ジェリコ選手には興味がありますか?」の問いに笑顔で応えてくれたのを思い出す。あの頃から棚橋の頭の中にはジェリコと闘うビジョンは描かれていたはず。2年越しに実現する今回の一戦は必見だ。
12.8広島・広島グリーンアリーナ大会ではジェリコから「ドームがオマエの引退試合だ!」というビデオメッセージのアピールに対し、棚橋は「軽々しく引退なんて言うなよ。俺はまだまだ引退なんてしないから。ただ、オマエの引退試合にしてやるよ」と応戦。デビュー20周年記念試合で「もう一度、IWGP(のベルトを)巻くから!」と叫んだ気持ちを今回、ジェリコにぶつけることだろう。棚橋弘至の2020年は愛するファンとともにハッピーな幕開けにしてもらいたい。
(どら増田)