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キャバ嬢列伝 〜可愛いあの子は偽ハーフ〜

 客商売であり、いかにお得意様を沢山得られるかが重要となるキャバ嬢の世界。お客様を獲得するためにキャバ嬢も工夫を凝らしている。話題の幅を増やしたり、サービスを心がけたり、記憶に残るように『キャラ付け』したり…。

 ある店で働いていた元キャバ嬢のAさんも、自分の売り込みに苦心していた。自分なりに頑張っているのだが、よくあるアイドル系のキャラも底抜けに明るいお笑い系キャラも合わず、中途半端。しまいには店長にも「Aちゃん、キャラが立ってないから人気が出ないね」と言われてしまった。

 考えあぐねた彼女はある日、出勤前に少しメイクを変えてみた時に、彫りの深い自分の顔立ちを改めて見返した。そこで、彼女は髪の毛を明るい金髪に染め、カラーコンタクトを着用。そして英単語とちょっとたどたどしいしゃべりで『ハーフの帰国子女』という設定で出る事にしたのだ。折しも、偶然古参のキャバ嬢達が辞めて新しい子達が入ってきたため、彼女の変ぼうに驚いたのは店長一人で済んだ。

 しかも、彼女のキャラチェンジは大成功。最近はハーフのモデルやタレントがバラエティで人気な事もあって、彼女はいつしかナンバーワンになっていた。

 しかし、それでも化粧を落とした彼女はごく普通の日本人。少し後ろめたさを残して接客していたのだが、ある時かつての同級生が店に来てしまった。幼なじみとも言えるほど、昔から彼女を知る彼の来店に彼女は「ハーフでない事をばらされるのではないか」と内心で不安になっていたが、同級生はむしろ彼女がハーフである事をフォローするようなトークを入れてくれる。昔から彼女の性格を知っていた彼は、仕方ないなと思いつつ悪ノリ混じりで助け船を出してくれたのだ。

 やがて、彼女と彼は意気投合し、付き合うようになって結婚。彼女はそのまま引退した。今でも当時の店にいた後輩達からは、「クォーターの子どもが出来るんですよね? 可愛いんだろうな〜、羨ましい!」と言われているらしい。確かに彼女に似て、目鼻立ちの整った濃いめの顔の子なのだが…「私は純粋な日本人なんですよね…」と、未だに少々後ろめたく思っているらしい。

(和田大輔/山口敏太郎事務所)

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