「巨人は必ず文句をつけると思いましたよ。なんのためにセ・リーグ優勝したのか、ということでしょう、巨人の言い分は」
巨人OBの一人はこう語る。大金を投じて他球団の主力選手や外国から選手をかき集め、やっとの思いで5年ぶりのリーグ優勝を取り戻した巨人にすれば、肝心のプレーオフで中日に簡単にひねられた。すべてプレーオフ制度が悪い、というわけである。
「ルールが悪い」と巨人のドンこと渡辺球団会長は不機嫌そのもの。とりあえず怒りの矛先は監督の原に向けられ「(中日の落合監督と)頭の違い」と自分が任命した指揮官を“バカ呼ばわり”する始末。確かに原の采配は「草野球並み」(評論家)とはいえ、名門球団の監督がこれではファンが見放してもおかしくはない。
「ちょっと待ってくれ」と言うのはセ・リーグ球団の幹部。「巨人はプレーオフ制度に積極的だったではないか。あまりにも自分勝手」と怒るやらあきれるやら。
大物評論家が解説する。 「巨人は4シーズンも優勝していなかった。今シーズンは優勝が無理でも3位までには入るだろうと目論んだすえの制度導入賛成だった。ところが予想外の優勝。従来通りの強気で新制度導入など認めなければよかったというわけ。要するに自業自得。来年は元に戻せと言うのでしょうな」
巨人がしたたかなのは、こういうときは必ず仲間を作ること。今回はソフトバンクである。ソフトバンクもパ・リーグ優勝しながら二度もプレーオフで負けた苦い経験を持つ。それでも文句を言わずに戦ってきた。もちろん腹の中では“おかしな制度”と思っている。そこを巨人は見逃さない。
「球界への影響力はやはり巨人が一番。腐っても鯛です。ソフトバンクは発言力、影響力がないことは知っています。巨人と組めば話は違う。巨人の話に乗ったとしても不思議はないでしょう」とはソフトバンクの関係者。巨人とソフトバンクが共闘すれば影響力は倍加する、と読んだわけである。
制度改革のポイントは観客動員との絡み。プレーオフ導入はファンの関心を集めた。
「要するにプロ野球の新しいイベントということです。制度の中身は異論があるだろうけれど、球場は満員になるし、テレビ放映もある。その意味では成功といえます」(大手広告代理店)
周囲の声を無視してきたプロ野球界は人気低迷から、セとパのチームが公式戦で対戦する交流試合、そしてプレーオフ導入と工夫をしてきた。客を呼べるイベントに巨人がダダをこね始めたのである。
巨人がソフトバンクと組んでプレーオフ制度を壊しに出るのは見え見えである。このオフはまた巨人を中心に「モメるプロ野球界」をさらけ出すことだろう。
「もう巨人に言いたいことは言わせない。言ってあげますよ、巨人は優勝決定の試合がテレビなしでしょう、とね」(球界幹部)。
巨人中心のプロ野球はすでに終わっている…。