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センバツ特集(2) 現場監督の声「2人目の投手が欲しい!」

 帝京、大阪桐蔭、花咲徳栄、大垣日大、中京大中京、神戸国際大付、関西…。今大会で、エース投手に匹敵する「2人目の投手」を持つ学校名を挙げてみた。炎天下の夏と、32校で頂点を争うセンバツ大会とでは戦略も違ってくるが、トーナメント大会を勝ち上がっていくには「2人目の投手」が不可欠とされている。不適当な表現かもしれないが、もし彼らが他校に進学していたとしたら、間違いなく、『エースナンバー』を背負っていただろう。

 1991年夏の甲子園だが、ある投手の故障が問題視された。同大会で決勝戦まで勝ち上がった沖縄水産のエース・大野倫は4連投を含む6試合に完投し、その代償として右肘を壊してしまった。「県大会から違和感を訴えていた」なる報道と、当時の同校監督の「死ぬ気で頑張ってもらう」なる試合前の発言が一人歩きし、高野連にも「何故、主催者として登板を辞めさせなかったのか!?」なる抗議の声も全国から寄せられた。
 「医師と監督、大野本人で話し合い、そのうえで先発マウンドに送りました。ドクターストップを無視するなんてことは絶対にしていません」
 当時を知る関係者はそう否定するが、以後、高野連は投手起用される可能性のある全選手にレントゲン検査を要請。医師の診察をもって、再発防止に臨んできた。各高校が「2人目の投手」育成に力を入れ始めたのも、そのころからである。

 また、その2番手以降の控え投手もエース投手にも引けを取らない実力を付けたからだろう。近年では、1試合に複数の投手を送り込む『継投策』で勝ち上がる高校も増えてきた。
 関東圏の私立高校監督がこう言う。
 「できることなら、1人(の投手)に1試合を任せたい。2番手以降の投手が劣る場合、何人かを継投させる戦い方もあるが、何故、継投策を使うかというと、甲子園の試合日程による調整が難しいからなんです。指導者として頭を悩ますのは、交代させるタイミングですね」
 甲子園の試合日程は“複雑”だ。極端な話、開会式から3、4日も経ってから初戦を迎えたと思えば、2回戦は「中2日」。ベスト8以降になれば、連戦も避けられなくなってくる。登板間隔が読めない分、エース投手の調整は難しく、監督の立場からすれば、「それだったら、複数制で臨んだ方が安全」と考えるだろう。前述の関東圏の私立校監督は「交代のタイミングを見計らうのが難しい」とこぼしていたが、指揮官として、もっとも悩むのは好投している投手を代える場面だと言う。
 「複数の投手を持った学校の球児は『継投策』が当たり前のことのように捉えています。極端な話、リリーフ登板する投手が出てきたら、『勝てる』みたいな感覚に…。先発させた投手が好投していると、交代させるイニングになっても、続投させるべきかどうかで迷ってしまう」(前出・同)

 交代、続投のどちらでも、監督が判断を見間違うと、その影響は次年度の新チームにも及ぶ。理由は簡単である。「監督の判断は間違っていないだろうか」と、不安に駆られるからだ。高校野球の監督は投手リレーの成功を積み重ねていかなければ、球児たちとの信頼関係は築けないのだ。
 一概に比較できないが、プロ野球の監督も『国際試合』の大舞台で継投策に悩まされてきた。
 「北京五輪・星野ジャパンの敗因の1つに、星野仙一代表監督が岩瀬を引っ張りすぎ、継投ミスが挙げられます。第2回WBCの原辰徳監督も決勝戦で急造ストッパーのダルビッシュの投入を急ぎ、延長戦を余儀なくされました」(連盟職員)
 ペナントレースを戦うプロ野球監督は、負けても翌日にまた試合がある。俗に言う『捨てゲーム』を作ったとしても、それ自体が問題にされることはない。しかし、高校野球などアマチュア野球の監督は違う。一戦必勝のトーナメント大会は負けたら、それで全てが終わりである。1球の怖さを知るアマチュア野球の監督たちは、投手の継投策、その駆け引きにおいては経験豊富だ。プロアマの交流には何かと障害も多いが、自由に意見交換できる機会があってもいいのではないだろうか。(一部継承略/スポーツライター・美山和也)

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