とのメールが知人女性からきました。記憶にあるような、ないような…。直接電話をして確認をすすると、その夜に一緒に飲みに行くことになったのです。というのも、以前から新宿2丁目に飲みに行こうという話をしていたのですが、実現していなかったからです。何人かで、飛田新地に行って以来の待ち合わせです。
飛田新地とは、大阪市内にある、かつての赤線地帯です。大正時代から遊郭として有名な建物もありますが、周囲には、まだその雰囲気を伝えている街でもあります。
ちなみに、大阪府では、「府風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行条例」によって、ソープランド営業が禁止となっています。また、「府歓楽的雰囲気を過度に助長する風俗案内所の防止に関する条例」により、ファッションヘルスのあっせん事業が禁止となっており、日本一厳しい条例とも言われています。
そのため、飛田新地は、大阪の中では、いろんな意味で、時代に取り残された地域にも見えなくもありません。その雰囲気を楽しむ観光客の姿も多いのです。
そんな飛田新地に行って以来ですので、夜の街を楽しもうとするのが2人の目的です。そのため、2丁目だったのです。
2丁目に行く前に食事をしていると、ガールズバーに行こうという話になりました。あるガールズバーに行くとたくさんの女性がいました。まだ平日の早い時間だったために、お客はやや少なめでした。
そのとき、知人女性がこう言ったのです。
「目の前のお客さん、女の子の股間ばかり見ているね」
私はある風景を思い出しました。かつて、出会い喫茶に行った時のことです。出会い喫茶は、女性側の部屋と男性側の部屋が仕切られています。女性側からは見えませんが、男性側からはマジックミラーで見ることができます。女性のカウンター席の場合、足下にマジックミラーがあり、足下が見えるのですが、ちらりと下着が見えることもあります。
ある男性は、女の子とトークタイムの楽しむことはせずに、女の子が入室するたびに、カウンターに座るのを待って、足下のマジックミラーのところに行き、下着ばかりをみていたのです。出会い喫茶で、女の子との「出会い」を目的とせず、「下着を見ること」を目的にしているのをみて、「新しい使い方だ。こんなの駅の階段でやったら捕まるが、ここではルールの範囲なんだ」と思ったものです。
私は、自分の立ち振る舞いを振り返ってみました。キャバクラやガールズバーで嬢のどこを見ているのでしょうか。私はいつも、顔や体型を中心に見ているのです。股間を中心に見たことはないなとも思いました。
ただ、私なりのこだわりがあります。身長です。いつも154センチの嬢を探しています。私の身長マイナス15センチが、なぜかちょうどいいと思ってしまいます。しかし、なかなか見つかるものでもありません。
ある日、ある六本木嬢からメールがあった。
「154センチの子は見つかった?」
と。見つかっていないので、「見つかりませんよ。だから彼女も嫁も見つかっていないです」と返信した。すると、すぐに返事があった。
「そのこだわりをやめれば?」
<プロフィール>
渋井哲也(しぶい てつや)フリーライター。ノンフィクション作家。栃木県生まれ。若者の生きづらさ(自殺、自傷、依存など)をテーマに取材するほか、ケータイ・ネット利用、教育、サブカルチャー、性、風俗、キャバクラなどに関心を持つ。近刊に「実録・闇サイト事件簿」(幻冬舎新書)や「解決!学校クレーム “理不尽”保護者の実態と対応実践」(河出書房新社)。他に、「明日、自殺しませんか 男女7人ネット心中」(幻冬舎文庫)、「ウェブ恋愛」(ちくま新書)、「学校裏サイト」(晋遊舎新書)など。
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