決勝戦では、そんな“不世出の天才”が強烈なインパクトを残したため、ほかのファイナリストの印象が薄れた。しかし、今年の“R-1”にはちょっとした異変が起こっていた。ザコシショウが所属するSMA(ソニー・ミュージックアーティスツ)の台頭が著しかったのだ。
準決勝には、ザコシショウのほかに、キャプテン渡辺、アキラ100%、おぐ、ハッピーエンドゆずき、マツモトクラブの5組が勝ちあがり。これは、圧倒的な所属人数を擁する、よしもとクリエイティブ・エージェンシーに次ぐ多さだった。
3月6日、フジテレビ系列で放映された生放送の決勝戦では、惜しくも決勝進出を果たせなかった復活ステージ枠の33人が、寒空の下で待つ様子が何度も映し出された。ここで、いちばんカメラに抜かれたのは、全裸で手にしたおぼんで下半身を隠していた、アキラ100%。司会者の雨上がり決死隊などからも、イジられまくった。そんななか、復活ステージをトップ通過して、決勝戦Cブロックに食い込んだのはマツモト。前年に続いて、復活ステージから本戦に進出するホンモノぶりを見せつけた。
マツモトが15年、まったくの無名から決戦戦に躍り出たのは衝撃的だったが、その前年(14年)にはおぐ、12年にはAMEMIYAとキャプテンがそろって決勝の晴れ舞台を踏んでいる。
AMEMIYAが12年ごろ、「冷やし中華はじめました」をヒットさせたのは周知の事実。さかのぼれば、同事務所からは、「チッキショ〜!」の小梅太夫も誕生している。現在のトップは、バイきんぐ。こちらも、まったくのノーマークから『キングオブコント2012』で王者になって、一躍ブレイク。あれから4年。コンビ格差は著しくなっているものの、小峠英二は芸人として安定の域に入ったといえる。
音楽シーンをけん引してきたソニーが、未知なるお笑い部門を立ち上げて、早11年。あまたあるお笑いプロダクションのなかではヒヨッコだが、その短い歴史の中でも小梅、AMEMIYAといったブームの立役者を生み、バイきんぐ、ザコシショウといった賞レースの覇者を生んだ。
おそらく、まだ掘り起こされていない金脈はあるはずだ。近い未来、ソニー芸人がお笑い界を引っかき回す可能性は、ゼロではなさそうだ。