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キャバ嬢が生まれる瞬間(65)〜スカウトに憧れてキャバ嬢になった女〜

松本真美(仮名・22歳)

 私は今までほとんどスカウトというものをされたことがなかった。学生時代は、よくクラスメイトが原宿でスカウトされたという話を聞いたりして、とても羨ましかったんだよね。だから私も当時は用もないのに原宿の竹下通りを歩いて、何往復もしたのだけど一切誰からも声がかからなかった。週に1回、毎週日曜日は昼の13時から夕方18時くらいまで欠かさず通っていたのに、すべて無駄に終わったのだ。

 だけどある日、用事があって渋谷のハチ公口で友達を待っていた際、生まれて初めてスカウトされた。どうやら芸能事務所らしく、そのままオフィスに連れて行かれ写真を撮られた。そしてプロフィールを作るからと、その制作費2万円を要求され、それだけ支払えば後は芸能界の進出をバックアップすると言われた。うれしくなった私はすぐにコンビニのATMにお金を下ろして支払ったんだよね。でも結局、その後は一切連絡がなくて、お金が返ってくることもなかった。騙されたのかもしれない。

 それからも、ナンパはもちろんキャッチからも声がかかることはなかった。それどころか、ティッシュ配りの人たちですら私をスルーする。そのため大学の友達の「キャッチがウザイ」という会話も羨ましくて仕方がなかった。そんな時、いつもスカウトされる友達に「なぜ私はされないんだろう」と相談してみると、いつも下を向いて怖い顔をして歩いている、そして服装やメイクが地味すぎると指摘された。

 素直にそのアドバイスを聞き入れた私はギャル系の雑誌でメイクを勉強し、服も通販とかでオシャレなものを集め、できるだけ派手さを心がけた。そしてかつて原宿の竹下通りへ通ったように、今度は歌舞伎町を歩くようになった。するとすぐにスカウトマンから声をかけられたんだよね。それがキャバクラのキャッチだった。とにかく私は自分が必要とされて声をかけられたことが、うれしかった。だから私は一生懸命がんばってキャバクラを続けていこうと決意したわけ。大学を卒業しても正直、就職とかはまだ考えていないから、私を選んでくれたお店でしばらく続けていくつもりです。

(取材/構成・篠田エレナ)

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