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キャバ嬢が生まれる瞬間(63)〜年上の男性が好きだった女〜

神楽坂明子(仮名・23歳)

 幼い頃に両親が離婚してから、私は母親に女手一つで育てられてきた。幼稚園の時に父親と離れて以降、一度も会っていないし、顔も覚えていない。でも特に子供の頃は寂しいだなんて思ったことがなかった。逆に母は夜遅くまで働いていて門限などもなく、どちらかといえば気楽だった。だけど10代後半になると、友達が「うちの父親がさぁ…」なんて話を聞く度に、“ああ、私には父の思い出がないんだなぁ”とどうしても考えてしまうようになった。あと意外にせつなくなるのが映画だったりする。特にハリウッドとかだとストーリーの中で、父子愛を描いた作品が多いんだよね。だからなんだか寂しさも相まって感動してしまうことも。

 そんな感情があったからだろうか、いつのまにか私は年上の人とばかり付き合うようになっていた。でも普通に生活していて出会えるのは同年代の男の子ばかりだから、インターネットで相手を探した。メール交換から始まり、いい人がいたら何回かデートを重ねて付き合ったりしていた。

 あと出会い喫茶なんてとこも出入りしてたな。基本的にあそこにいる子は援助目的の女の子が多いのだけど、私はそういうことは一切せずに、選んでくれたおじさんと食事に行くだけ。それ以上の提案をしてくる人は断ってたし、食事のみでお金をくれる人からも受け取らなかった。

 そんな生活を続けているうちに、年上の男の人ともっと色々話してみたいと思ったのがキャバクラで働くきっかけになったんだよね。それでいざ働いてみると、おじさんの中にはお説教をしてくる人がたくさんいる。同僚の女の子はそういう客をみんな嫌がってるけど、私はそうは思わない。私のために言ってくれているんだろうなって。だから素直に謝ったり、わざわざありがとうございますってお礼を言ったりする。これは父親の愛情を受けてこなかったから、お説教されたいという心の現われなのかもしれない。今まで叱ってくれる人がいなかったから。それともしお店で素敵な年上男性と出会えれば、交際しようかなとも考えています。

(取材/構成・篠田エレナ)

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