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キャバ嬢が生まれる瞬間(62)〜ラジオの話を客にしたかった女〜

平井真紀(仮名・26歳)

 私は昔からラジオを聞くのが大好きだった。ラジオといったら深夜ラジオなので学生時代は起きているのが辛かったけど、それでも眠い目を擦りながら必死に起きていた。有名な芸人さんたちが『オールナイトニッポン』とかでするトークが大好きで、いつもテープに録音しては、暇な時にも何度か聞いたりしていた。

 やっぱ生放送ラジオのいいところは、テレビとは違い編集されないしゃべりが聞けるからおもしろいんだよね。あと深夜1人で聞いていても、この地球上のどこかでマイクに向かって話してくれている人がいるってだけでも、どこか安心できる。あと次の日、学校で絶対やってしまうのが、昨夜パーソナリティーが話していたことを、そのまま自分が体験したかのように話してしまうこと。

 自分が訪れたことのある場所だったり、見たことのあるテレビや映画の話を、プロの人たちは最高におもしろく話す技術があるから、それをそのまま話してクラスの子たちから笑いをとったりしてた。その頃は発言が今ほどニュースになったり、YouTubeにすぐアップされるって感じではなかったから、バレなかったんだよね。深夜ラジオなんて若い女の子はそこまで聞いていないし。

 その癖は今でも治ってなくて、当たり前のようにラジオの話を引用しちゃう。もちろん今まで、「それ○○のラジオで言ってたやつだよね」って指摘されたことはあるけど、「そうだっけ」って笑いながらごまかしてきた。だから最近は有名すぎる番組の発言じゃなくて、マイナーな芸人さんだったり、1部でなく、さらに時間の深い2部の放送を聞いて、トークを抽出している。

 高校を卒業してフリーターになってからは、漫画喫茶や居酒屋とかで一部の同僚にラジオで培ったトークを披露してきたんだけど、どうせならもっと多くの人に話したいと考えるようになった。だから私はキャバクラ嬢になったんだよね。キャバクラで会った人にもっとたくさん、私のトークを聞いてもらいたい。ラジオの話をそのまますれば、自分がおもしろい人間になったかのように錯覚できてとても気持ちがいい。

 今でも録音したものをMP3プレーヤーに入れて、移動中とかも電車でずっと聞いてる。これからもラジオで仕入れたネタで、お客さんを楽しませていきたいですね。

(取材/構成・篠田エレナ)

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