「オーストラリア戦はホーム(横浜・日産スタジアム)。すでにチケットが完売しているようにファンの関心は高い。勝利するのがベストですが、たとえ引き分けでも予選突破は見えてくる。70%大丈夫でしょう」
「試合内容によるが、負けるようなら予選突破は厳しくなる。本番への出場権獲得は五分五分。ひょっとすれば(予選敗退が)あるかもしれない」
ファンなら、どっちなんだと聞きたくなる、この相反する見方は、岡田ジャパンの戦いをつぶさに見てきた2人のサッカージャーナリストによる。オシム派でもなければ、岡田監督の戦術を評価しているわけでもない。それほど予断を許さないのが現状なのだ。
一昨年の秋、オシム氏が病に倒れていなければ違う見方になっていたかもしれない。監督が代われば、すべてが変わるのがサッカーだからだ。スポーツ紙担当デスクが言う。
「人もボールも絶えず動くサッカー、それこそサッカーの日本化を掲げたのがオシム氏。FIFAのテクニカルディレクターの立場から、世界のサッカーを熟知しているからこそ出せたビジョン。市原(現ジェフ千葉)監督としてナビスコ杯で優勝(05年)するなど結果を出しているように、その方向性は間違ってはいなかったと思う」
しかし、オシム氏はもう日本にはいない。再び戻ってくる可能性も、ほとんどゼロに近い。オシム流は必要ないと日本協会が判断したと思われるからだ。
前出のサッカージャーナリストの1人が言う。
「涙を浮かべてまでオシム氏の回復を願った、川淵名誉会長が下した結論と見ていい。犬飼会長はJリーグの日程変更など、いろいろと改革案を打ち出しているが実権を握っているのは川淵名誉会長。院政を敷いている。同じ大阪生まれ、早大出身なのが岡田監督。よほどのことがない限り、(監督を)交代させるつもりはない」
W杯予選を突破できれば川淵=岡田ラインは安泰だろうが、関係者が危惧しているのは、その先。将来を託すに足る人材が育っていないのだ。
「10日に準決勝がある全国高校サッカーには、準決勝に勝ち残った鹿児島城西FWの大迫雄也が8得点するなど活躍しているが、将来性となると疑問符がつく。大味な試合ばかりで、ユース世代を含めてレベル低下が目につくからです」(前出・デスク)
かつて、多忙なスケジュールを押して高校やユースの試合まで足を運んだオシム氏が観戦していれば、何と言っただろうか。スポーツ紙サッカー担当が嘆く。
「高校卒業してすぐにJリーグで活躍した、小野伸二(ブンデスリーガ1部ボーフム)や稲本潤一(同フランクフルト)のような有望な若手は、残念ながら見当たらない。南アW杯に出場できたとしても12年ロンドン五輪はもちろん、次のW杯も(出場でき)ない可能性もあります」
昨年11月、岡田ジャパンは敵地ドーハでカタールに3ー0の圧勝。岡田解任騒動は消えたものの、再燃しない保証はない。それにしても、オシム氏が残した財産を食いつぶすどころか、世界のサッカー界から取り残される懸念。川淵院政の罪は重い。