6月3日、日本野球機構(NPB)の理事会と12球団代表者による実行委員会が開かれた。主テーマは来シーズンの日程。東京五輪の影響でペナントレースが変則日程となるため、開幕戦は例年よりも1週間ほど早い3月20日に設定された。すでに決定していたこの日程に対し、一部から「2月1日のキャンプインも前倒しする必要があるのではないか」と提案されたのだ。
「結論としては、現状のまま2月1日のキャンプインと決まりました。先に行われたNPBとプロ野球選手会の事務折衝の内容についても、改めて報告されています。会議の主テーマは日程問題ですが、本当は、出席者は選手会との折衝内容を確認することに重点を置いていたようですね」(ベテラン記者)
その事務折衝は、5月20日に終わった。一部報道にもある通り、選手会は出場機会の少ない選手を対象とした「現役ドラフト」の導入を提案している。
同26日、選手会は改めて現役ドラフトについて説明している。出場機会に恵まれないプロ選手の移籍を促進しようと、ある一定の基準を決めて、一軍出場の試合登録日数がそれに満たない選手を対象にした“新・ドラフト会議”を行う。指名後は金銭トレードの手続きをし、移籍となる――。いくつかの海外プロ組織ではすでにこの制度が導入されている。メジャーリーグでは、「ルール5ドラフト」と呼ばれている。メジャーリーグの試合出場が可能な40人枠に入っていない選手が対象となり、加えて、契約したときに19歳以上だった選手は4年、18歳以下は5年が経っているとの条件が定められている。
「獲得したら、次年度のシーズンは、必ずシーズンを通じて、ベンチ入り登録の25人の中に入れなければならないと決められています。できなかった場合は、旧在籍チームに返す約束になっています。ジョシュ・ハミルトン、ヨハン・サンタナのように、このドラフトでチャンスをつかみ、のちにリーグを代表する選手に成長したケースもあります。でも、大半は試合に出るのがやっと…」(米国人ライター)
選手会は、このメジャーリーグ式のルール5ドラフトをイメージしているそうだ。コーチ経験を持つプロ野球解説者がこう言う。
「選手が移籍することで活躍の場、出場機会が増えるのは良いことだと思います。とはいえ、若手選手が移籍先で活躍すると、旧在籍チームでは現場批判が起こります。選手会は交換トレードをもっと増やしていくべきとも提案していましたが、その方が経営陣も歩み寄れると思います」
旧在籍球団への批判を懸念する声は少なくなかった。三軍制のソフトバンク、巨人は特に標的とされるだろう。しかし、こんな意見も聞かれた。「若手選手でなければ、ダメなのか」――。
「出場機会を奪われたベテランも対象に入るのなら、旧在籍チームへの批判も出にくい。ベテランが必要とされ、移籍チームのために尽くし、中堅・若手にこれまで学んできたものを教えるのなら、その方が球界全体のイメージアップにもなります」(関係者)
リストラからはい上がるストーリーは日本人が好むもの。若手ばかりではなく、全ての年代にチャンスを広げるのならば、経営陣も前向きになれるだろう。NPBは今回の選手会の提案に対し、明確な回答をしていない。
「選手会と対立すると、今秋のプレミア12、東京五輪、次回WBC大会の選手派遣にも影響してくる。穏便に解決したいというのも、経営サイドのホンネです」(前出・同)
日本式のルール5ドラフトが確立される可能性は高い。