同番組では、「こんな私でも心が折れました」をテーマに、宮本が過去に打ちひしがれたエピソードを紹介。若気の至りとも言える言動が災いしてレコード会社との契約が打ち切りになったこと、自身のCDが50万枚近くのセールスを記録して天狗になっていたところを、ミリオンセラーとなったGLAYの「HOWEVER」に打ちのめされた際の心境などを、悩ましげに髪を両手でかき乱しながら語った。
番組MCの東野幸治から、23枚目のニューアルバム『Wake Up』の収録曲「Easy Go」の歌詞が、こうした苦労に裏打ちされた“応援歌”になっていると褒められた瞬間、宮本は先ほどのオーバーリアクションとは打って変わって、他人事のように「あー、Easy Goの…」とだけ発言し、会話は終了。これには東野も、「こんな肩透かしある?」と、苦笑いするしかなかった。
宮本と言えば、これまで自身のバンド活動のみならず、定期的にバラエティ番組やテレビドラマに出演するなど、業界内での人気は非常に高い。爆笑問題の太田やダイノジの2人ら、ファンを公言するお笑い芸人も多く存在する。しかし、異常なほど大きな身振り手振りと表情、よもや放送事故かと思えるほどの長い“間”は、決して流暢なトークには見えない。
一体、なぜ彼はそこまでテレビ業界から重宝されるのだろうか。
宮本は、趣味が「文学」と「将棋」という、典型的な文化系男子。特に“森鴎外”は、その名前自体を“象徴”として歌詞に組み込むほど思い入れが深いようだ。加えて、さまざまなテレビ番組で、「人とうまく会話できない」と宮本自身が公言している通り、器用なタイプでないことも、ミステリアスな印象を深めている。
2004年3月に『NONFIX』(フジテレビ)で放送されたドキュメンタリー番組「扉の向こう〜エレファントカシマシ・宮本浩次という生き方」では、女性に金銭面の管理一切を任せた結果、全財産を持ち逃げされたことを告白。また、同番組では、宮本が思い通りに動かないメンバーを怒鳴り、無精ヒゲを生やしながら這いつくばるようにして歌を作り上げていくレコーディング風景を見ることができる。こういった、テレビで見せる一風変わった印象と不器用で真摯な顔とのギャップが、多くの人を虜にする一因だろう。
「エレファントカシマシは、中学の同級生をメインに結成されたロックグループ。ファンもそうですが、おそらくメンバーも音楽一筋にしか生きられない宮本さんの姿勢に心惹かれるのでしょう。結成してから今年で31年目ですが、一度もメンバーチェンジはありません。きっと周りの人間は、彼の“愚直なまでに真っすぐな生き方”に惚れ込んでしまうのではないでしょうか」(芸能ライター)
宮本の業界人気は、トーク番組で見せる個性的な立ち振る舞いのみならず、たくさんの人に宮本の存在や熱い歌を知ってほしいという“願い”に後押しされてのことかもしれない。2012年には突発性難聴に見舞われるも、克服して活動を再開。昨年は、念願の『紅白歌合戦』(NHK総合)に初出場を果たし、30周年ツアーも成功を収めた。七転び八起きの人生を歩む宮本が、どんな歌を聴かせてくれるのか今後も目が離せない。