『WORLD TAG LEAGUE 2018』
▽29日 東京・後楽園ホール 観衆 1,723人(札止め)
「もっと華々しくいきたかったな」
試合後、ヤングライオン(若手選手)の肩を借りてインタビューブースに現れた棚橋弘至は、いったんノーコメントのまま控室に入ろうとした。先に引き揚げてきたオカダ・カズチカはダメージが深くノーコメントで控室に入っていったが、棚橋は違った。立ち止まり、ひと言だけコメントを残した。
今回の後楽園ホール大会は、棚橋とオカダの歴史的なタッグを見ようと、カード発表直後にチケットが完売。会場はオープニングからものすごい盛り上がりを見せていた。これはゴールデン☆ラヴァーズが再結成した時と似ている。今シリーズは棚橋&オカダに、KUSHIDA、そしてロッキー・ロメロが加わる形での6人タッグ、もしくは8人タッグが組まれている。まだ2人のだけのタッグは予定されていないが、2人が同じコーナーに並び立つことを考えただけでも“夢”を感じる。
この日、2人が握手するキッカケを作ったジェイ・ホワイト率いるバレットクラブは、棚橋&KUSHIDAとオカダが別入場であることに目をつけた。先に入場したオカダをバッドラック・ファレ、石森太二の2人とともに奇襲。棚橋&KUSHIDAが慌ててリングインし、コスチューム姿のままゴング。棚橋とオカダが並び立つ姿を期待していたファンからブーイングが起こった。
バレットクラブは来年1.4東京ドーム大会でジェイと対戦するオカダに照準を絞り、セコンドの外道も巧みに介入して、棚橋&KUSHIDAになかなかタッチさせない。オカダが棚橋にタッチをしたのは、ファレにDDTを放った直後のジャンピングタッチ1回のみ。その際、会場のボルテージは最高潮に達していた。
棚橋はファレにドラゴンスクリューを決めると、オカダもジェイにドラゴンスクリューを見事なタイミングで決めた。場内は大いに盛り上がったが、最後はKUSHIDAがジェイのブレードランナーから、石森のブラディークロスという2人の必殺技を連続で食らい3カウントを奪われた。
1.4東京ドーム大会で石森の挑戦を受けるIWGPジュニアヘビー級王座・KUSHIDAにとっては手痛い敗戦となった。試合が終わっても攻撃をやめないバレットクラブは、ジェイがオカダ、棚橋にブレードランナーを連発。2人がリングに大の字になっている中、マイクをつかむと観客にブーイングを煽るかのように英語で挑発。歴史的な合体によるハッピーエンドを期待していた場内からは「帰れ」コールが発生。この日から顔にペイントを施していたジェイの表情は自信に満ちあふれていた。
今回は惨敗だったが、2人の連携を見る限り、棚橋&オカダが本格的に機能すると相当強く息の合ったタッグになるのは間違いない。ただ今回のようなセコンドの介入も辞さないチームを相手にするとやっかいだ。横綱相撲のようなプロレススタイルを築いてきた2人であるがゆえに、相手の攻撃をお互いに受けすぎると今回のように、タッグチームとしては致命傷になるのかもしれない。だが、IWGPヘビー級王座の防衛記録1位と2位のタッグは誰が見ても夢と魅力がある。2人の行く末がどうなるのか知る由もないが、「華々しい」夢のタッグが続くよう期待したい。
取材・文・写真 / どら増田