まず、平将門と今回の事件の奇妙な符合である。加藤容疑者は静岡から上京、レンタカーを運転し、神田明神の前を通過して秋葉原に乱入している。この神田明神に奉られているのが将門の御霊である。因みに神田(かんだ)とは、元々神田(かど)と読んでいた時期があり、将門に通じる。つまり、江戸の守護神・将門が祭られた神田明神の眼前を通過して、秋葉原に切り込んでいるのだ。さらに、犯行日である6月8日は、鳥越明神の祭日にも当たっている。この鳥越明神とは、将門の首が飛び越えたことから、飛び越えがなまり鳥越明神と名づけられた将門ゆかりの神社である。加藤容疑者は将門ゆかりの鳥越神社の祭日に、将門が祭られた神田明神の前を通って犯行に及んだのだ。
しかも、彼の住む静岡県にも、将門の首塚がある。掛川市にある十九首塚は、将門一族郎党19名の首が埋まっていると言われているし、同市内の池辺神社も、将門の首が埋葬されており、将門の剣、犬の掛軸、薬師如来など将門の宝物が奉納されているという。
まだまだ不気味な偶然の一致は続く。将門は北斗七星を信仰しており、北斗七星の呪術を使って、朝廷軍と対峙したのである。そのためだろうか、将門関連の伝承には数字の7が深くかかわってくる。千葉県市川市にある薮知らずは将門の影武者が死んだ場所とも言われているが、この影武者が7人なのだ。また西多摩にある七つ石という場所も、将門が7人の影武者を使って、天敵・俵藤太をかく乱した場所。さらに、都内にある将門ゆかりの7つの神社、鳥越神社、兜神社、将門首塚、神田明神、筑土神社(津久戸明神)、水稲荷神社、鎧神社を結ぶと北斗七星の形になるのだ。今回の通り魔事件でも7人の尊い命が奪われた。北斗七星と被害者7人の一致、この偶然の一致はいったい何を意味しているのであろうか。
さらに、この加藤智大容疑者と宅間守の犯行が一致しているという情報もある。今回の惨劇は2008年6月8日に発生しているが、この日からちょうど7年前の01年6月8日に宅間守が池田小学校に乱入、無差別殺人が発生しているのだ。加藤容疑者はひょっとして宅間守に影響を受けた上で犯行に及んだのであろうか。自ら進んで死刑台に上った宅間守は、一部の犯罪者の間で神格化されているらしい。
それにしても、加藤智大と宅間守の行動は似ている。車で犯行現場に乗り込んで、刃物で無差別殺人を行うという手口はまったく一緒だし、宅間守は当初、大阪の商店街に車で乱入し、無差別殺人を行おうと思っていたという。さらに似ているのは、子供時代の境遇である。少年時代、加藤も宅間も頭脳が明晰であり、その後成長するにつれだんだんと歪んでいった。また、2人とも強い自殺願望があり、自分ひとりで死ぬのはいやだからという幼稚な理由で、他人を巻き添えにしているのだ。はたして加藤容疑者は宅間守をオマージュして、似たような犯罪を同じ日に行ったのであろうか。
どちらにしろ、許しがたい犯罪であり、今後発生が予想される模倣犯への徹底的な警戒、殺傷能力の高いダガーナイフの取り締まりが必要であろう。今回の惨劇で理不尽なまま亡くなられた方のご冥福をお祈りしたい。このように都市伝説を生み出すほど、社会不安を引き起こした犯人には厳罰が科されることを強く希望する。
(通り魔事件の現場にほど近い神田明神(上)=東京都千代田区=と鳥越神社(下)=台東区)