把瑠都は昨年秋場所(9月=両国)で右足親指をはく離骨折、九州場所(11月=福岡国際センター)では左太もも裏を肉離れし、2場所連続で途中休場し負け越して、関脇に陥落。今場所、10勝以上を挙げれば特例で大関に復帰できた。
しかし、慢性化した左ヒザの故障は完治にはほど遠く、場所前の稽古は満足にできなかった。序盤戦、1勝2敗と厳しいスタートを切った把瑠都は、中盤戦から積極的に前に出る相撲に転じ、5勝3敗と星を持ち直した。だが、横綱の白鵬(27=宮城野)、日馬富士(28=伊勢ヶ浜)に連敗し、絶体絶命の5敗目を喫すると、13日目(1月25日)に平幕・高安(22=鳴戸)に寄り切られて6敗となり、大関復帰は露と消えた。
大関への返り咲きがならなかった把瑠都は、「残念です。ちょっと硬くなった。組んでくるとは思わなかった。何をしたかったのか分からない」と首をひねるばかり。今後については「残り2日間頑張ります」と、自身に言い聞かせた。
一から出直しとなった把瑠都だが、大関復帰への道のりは極めて厳しい。現行の降格制度になった69年名古屋場所以降、関脇に陥落したケースは把瑠都以外に16例(13人)あるが、落ちた場所に10勝以上を挙げて大関に戻ったのは5例(4人)しかなかった。ましてや、そのチャンスを逃した11例(10人)のうち、大関に再昇進できたのは魁傑(現放駒親方)ただ一人。
今場所、東前頭16枚目の雅山(35=藤島)は、01年九州場所で陥落後、06年に再びチャンスをつくり、三役で3場所連続2ケタの34勝(11敗)と十分な星を挙げたが、不運にも大関再昇進は見送れたケースがある。
北の湖理事長(元横綱)は「今場所は上がるチャンスだったが、一からやる方がもっと厳しくなる」と明言した。一度落ちた元大関の再昇進には、より高いハードルが待ち受けているのは必至。ましてや、現在4人の大関がおり、どうしても新たな大関をつくる必要性はない。
スポーツライターのA氏は「把瑠都の大関陥落は、身から出たさびですよ。把瑠都は稽古嫌いで知られており、降格の原因となったケガの多さは稽古不足からくるものです。1年前(昨年初場所)に優勝したように地力はある力士ですから、親方衆の間では、『稽古していれば、とっくに横綱になっている』と言われています」と語る。
把瑠都が復活できるかどうかは、故障箇所を治すこともさることながら、「稽古嫌い」の持病を克服するしかなさそうだ。
(落合一郎)