矢野燿大監督(50)が藤浪晋太郎(25)の早期の一軍復帰を否定した。二軍調整中の藤浪が四球で自滅しないピッチングを続けている。“結果”を出した時点ではなく、今になって「一軍昇格の可能性」が伝えられた理由は、球宴前のスケジュールにある。7月2日から9連戦となる。連戦となれば、先発ピッチャーの頭数は多いに越したことはない。だから、藤浪にもチャンスが回ってくるのではないかと思われたのだが、矢野監督は「2軍で抑えたからいいよっていうものではない。チーム状況もあるのに、晋太郎だけでチームを動かされへんし、そのつもりもない」と、言い切った。しかし、この言葉には、中盤戦以降の戦略が隠されていた。
「先発ローテーションの見直しは交流戦途中から検討されていました。当然、その過程で藤浪の名前も出ていました」(球界関係者)
12球団ワーストの失策数「66」をカウントしていても(6月28日時点)、貯金1の3位をキープできているのは、投手陣の踏ん張りとしか言いようがない。但し、矢野監督はそうは見ていなかったようだ。
現状の阪神先発ローテーションは、以下の通り。
青柳 5勝4敗
高橋遥 1勝2敗
西 3勝6敗
ガルシア 2勝3敗
メッセンジャー 3勝5敗
岩田 2勝2敗
つまり、先発投手陣で「貯金」を作っているのは、青柳だけ。トータル16勝22敗。ここに救援陣の勝ち星を加算して、35勝34敗4分けというチーム勝敗になるのだ。
先発投手に勝ち星が付いていない。よって、9連戦は藤浪を加え、その結果次第では、調子の良くない先発投手と入れ換える案が出てもおかしくはないのだ。
しかし、矢野監督がこの連戦を現有戦力で乗り切るとしたのは、藤浪を不要と判断したのではなく、「温存した」のだという。
藤浪は6月29日の二軍戦で登板する。今後、一軍でやっていくために、ある程度のイニング数は投げさせる予定だ。矢野監督はそこに加えて考えたのが、日程のこと。というか、7月中は藤浪の復帰に相応しい球場が見当たらないのだ。
「藤浪を一軍でまた投げさせる時は勝ち星を付けてやらないと、本当にダメになってしまいます。そうなると、相性の良いDeNA戦がいい。甲子園球場だと、ボールカウントか先行したら、観客もザワつき、また精神的に追い込まれてしまいます」(前出・同)
藤浪の復帰戦に相応しいのは、ビジターのDeNA戦。つまり、横浜スタジアムだ。
7月2日から横浜スタジアムで3連戦がある。ここは、29日の二軍戦での登板直後なので回避させなければならない。その後のDeNA戦だが、8月22日の京セラドーム3連戦もあるが、こちらは阪神の地元みたいなものなので、甲子園と同じザワツキが生じる。7月2日からの3連戦を逃すと、次に横浜スタジアムでの試合は9月3日までないのだ。
「夏の甲子園大会の影響もあり、チーム全体に疲労感が出る時期です。そこで藤浪を使うつもりなんでしょう」(前出・同)
いっそ、6月29日は短めのイニングで降板させ、中4日で横浜スタジアムでの3連戦最後の7月4日に投げさせる方法もある。天気予報では雨の可能性も高いが…。雨天決行という、最悪のコンディションを回避させたとなれば、「藤浪だけでチームを動かせない」と言いつつも、本当は、かなり気を遣わせていたようだ。いずれにせよ、ここまで一軍首脳陣に配慮してもらった以上、藤浪は何がなんでも復帰登板で勝たなければならない。
(スポーツライター・飯山満)