今年30才になる彼はとても明るく、生徒や父母からの信頼もとても厚い好青年です。そこの学校の吹奏楽部は夏休みの合宿を校内で行っていました。
夏休み中に行われるコンクールに向け、練習をしている二日目の夜、8時過ぎのことです。トイレに行っていた一人の女生徒が
「先生、足音がするんです。」
と、真っ青な顔をして顧問に告げてきたそうです。
そこには他の部員達もいたので、全員そのことが気になりました。
「自分の足音だろ。」
と顧問は一笑に付したものの、生徒の何人かは
「怖い、怖い。」
と騒ぎ出しました。
仕方なく顧問の彼は、合奏の練習を休止し、真偽を確かめるため、体育館の方へ向かう廊下の途中にあるトイレの方へと向かいました。その後ろを興味をもった男子生徒も数人ついてきたそうです。
その場で、音がするか全員静かにさせ耳を澄ましたところ、戸の開いている体育館の2階アリーナの方から確かにペタペタと足音が聞こえてきました。
「2階に行ってみるから、ここにいて歩くなよ。」
そう、生徒に言い、廊下の電気を全部点灯させ、2階アリーナに行くと、すぐそばに聞こえた足音が姿を見せずに急に早くなり、2階体育館放送室の方へ消えていったそうです。
「はじめは、変質者だったらやばいな。と思ったけど、誰もいなかったんですよ。鍵も全部確認しましたけどどこも開いていませんでした。」
その後、その日の夜は練習どころではなく、大騒ぎでしたが、風の音だったと生徒に話すことにして、ようやく生徒の動揺を静めたそうです。余談ですが、トイレの前の廊下で、顧問と副顧問の先生は交代で寝ることになり、次の日は身体の節々が痛く練習にならなかったとのことでした。
監修:山口敏太郎事務所