今回の昇格に二軍首脳陣が反対し、そのことを伝えた各メディアに対し、栗山英樹監督(58)が「必要だから呼んだ」と反論したのは既報通り。清宮のヒットは栗山監督を救う一打ともなったわけだが、「戦力」として疑問視する声はいまだ続いている。
「清宮が二軍の実戦に復帰したのは5月14日、わずか10日後で一軍に帰ってきたことになります。経験豊富なベテランならまだしも、一軍でまだレギュラーを獲得していない、プロ2年目の選手です。やはり、栗山監督の温情だと思います」(ベテラン記者)
温情…。しかし、えこひいきではないようだ。長期故障の経験を持つプロ野球解説者がこう言う。
「リハビリってのは、通常の練習よりもラクなんです。通常の練習をして身体が疲れると、精神面での達成感みたいなものもあるんですが、リハビリはやっても身体が疲れないので、『こんな調子で大丈夫なのだろうか』と常に不安になります。チームと離れて一人になることも多いので、気持ちの上でもつらい」
栗山監督はそういった清宮の不安感から救うため、一軍という刺激の多い世界にいったん引き入れたとも解釈できる。
一方、他球団の反応だが、「戦況に大きな影響ナシ」とみる声と同時に「清宮次第」と意味深な言い方をするスコアラーもいた。
「日本ハムは、5位。勝率も5割を切っています。チームの起爆剤として、清宮を呼んだのかもしれません」
清宮昇格が決まる前夜、日ハムは東北楽天に快勝した。勝率がようやく5割を超え、貯金1。この時点で、千葉ロッテ、埼玉西武も勝率5割をウロウロしている状況だったが、首位ソフトバンクと2位楽天とはさほど離れていない。勝率5割ラインの日ハム、ロッテ、西武にも首位浮上の可能性は十分にあった。
「若い清宮が打ってチームが活気づけば、日ハムは上昇気流をつかむことができます。栗山監督はそういう狙いも持っていたのではないか?」(前出・ライバル球団スコアラー)
また、日ハムに限った話ではないが、GWの大型連休期間の連戦で、選手は疲れきっている。主力選手を休ませたい。1、2試合、試合から外れるだけで十分な回復が望めるのだが、代わりが務まる選手が見当たらない…。そんな状況だという。
試合に出場することを前提とした一軍昇格だったようである。その意味では、清宮は大きなチャンスをもらったといえるが、チームを活気づけるまでには至っていない。清宮の合流した西武3連戦は、全て落としてしまった。
打点を稼いだ25日の第2打席だが、相手ピッチャーは快速球を誇る多和田真三郎だった。実戦に復帰して間もなく、二軍投手の速球にも差し込まれていたのに、一流投手を相手に結果を出した点は、素直に評価すべきだろう。栗山監督は、一流選手はトップレベルの中で調整すべきとも考えていたのかもしれない。
(スポーツライター・飯山満)