日本球界の幹部が驚きを口にする。
「あの程度の、しかも将来性のない投手に、あんな高額契約を提示するとは思わなかった。このままでは日本球界の未来はなくなってしまうんじゃないか…」と絶句状態なのである。
小林雅はインディアンスと「2年、625万ドル(6億9000万円)」。薮田もロイヤルズと「2年、600万ドル(6億6000万円)」。今シーズンの小林雅の年俸は2億5000万円で、薮田のそれは1億1300万円。
日本での成績は、小林雅が抑えとして活躍し、通算227セーブ。今年は27セーブで前年の34セーブから落ちた。「球にまるでキレがない」と相手チームから軽く見られるようになり、衰えは歴然。年齢も33歳と峠を越えている。薮田にしても34歳。今季は「最優秀中継ぎ投手」となったが、12年間で44勝59敗9セーブと、どうということのない並の数字である。
薮田と契約したロイヤルズの来シーズンの監督は、今季まで日本ハムの監督を務めたヒルマン氏。同じパ・リーグだったから力量は知っていたと思うが、それにしても恵まれた契約である。しかも3年目の2010年については、契約した場合、400万ドル(4億4000万円)となっている。
「この両投手の獲得と契約内容を見ると、二つのことが言えます。一つは大リーグの投手がいよいよ底をついてきたな、ということです。もう一つは完全に日本球界をファーム扱いしてきた、ということです。つまり日本の投手は毎年のように持っていかれますね」(大リーグ通)
日本球界が大リーグに頼りにされていることは事実だろう。今シーズンのワールドチャンピオン、レッドソックスの投手陣を支えた松坂大輔と岡島の好投は大きな材料となった。
「とりわけ岡島の活躍は効きましたね。日本では正直言って三流投手。それがあれほど活躍したのだから、日本の投手はだれでも使える、と判断したんでしょう。40歳近いドジャースの斎藤も大活躍しましたから。取れるものならみんな取っちゃえということなのでしょう」(セ球団幹部)
大リーグのやり方は、自分たちが生き残れるなら相手を飲み込む、という狩猟民族丸出しである。日本球界がそのターゲットになったといってもいいだろう。
米国在住のスポーツジャーナリストが語る。
「大リーグの各球団は、日本球界がつぶれても構わない、と思っているはずです。金さえ出せばすぐ飛びついてくる、と日本選手を見ていますからね。日本球界は早く手を打たないとプロ野球が持ちませんよ」
まさに警鐘である。
ところが日本の選手は大リーグの見立て通り「できたら大リーグに行きたい」と言う。落ち目の小林雅、実績のない薮田であの高契約に大いに刺激されているのである。
広島の黒田博樹も大型契約が見込まれている。「広島が好きです、と涙を流しながら大リーグへ行く、というのですから訳が分からない。要するに、いい格好しているわけです」(広島担当記者)
日本球界は今や“投手専門ATM”になっている。