2020年夏季五輪をめぐっては、ローマ(イタリア)が立候補表明するなど招致レースはもう始まっている。
そんな中、知事は敗戦に落ち込んだ様子もみせず、東京開催計画や最終プレゼンテーションの出来栄えをあらためて自画自賛した。
「悔いのない戦いをした。しかし、目に見えない非常に政治的な動きがありますな。昔の自民党総裁選のような。はっきり言って(日本で五輪を開催するには)JOCはもっと強くならなきゃダメだ」などと水面下の攻防で敗れたことを主張し、次こそは対等に渡り合えるよう日本オリンピック委員会(JOC)に注文をつけた。そこまで言いながら、逆に連続立候補表明しないほうがおかしいほどだった。
やはり、3期目任期満了となる11年春で知事職を退くとしてきたため、そうそう無責任なことは言えないのか? ところが都庁関係者は「そんなことじゃないと思いますよ」と指摘する。
「2020年には地球滅亡の危機が迫り、五輪が開催されないんですよ(笑)。IOC総会前に開かれた現地懇親会や記者会見で、石原知事は『このままでは2016年が人類にとって最後の五輪になるかもしれない』などと環境破壊の深刻さを訴えている。環境保護を旗印にした東京ならではのアピールですが、外国メディアは唐突な地球滅亡論に驚き、『東京を選ばないと五輪はなくなるということか』などと誤解したぐらい。結果として東京は選ばれなかったから、現時点で地球滅亡の危機を食い止める手立てはなく、従って2020年五輪はない。開催されないと言っていたものに立候補するほうがおかしい」(同関係者)
リオのペレ氏やシカゴのオバマ大統領のような世界に通用する“顔”が立てられなかった東京は、環境一本に絞って最後の追い込みをかけた。もともと知事はホーキング博士から聞いたとする「宇宙論」をひも解き、環境破壊の恐るべきスピードから「地球はそう持たない」などと訴えることがままあった。
現地の最終プレゼンテーションでは、“隠し玉”としてトップバッターを務めた15歳の体操選手・三科怜咲ちゃんが世界の若い世代を代表して将来を心配し、これを受けた知事が子孫の代まで地球環境を守るための『東京五輪』を約束。さらに国連総会で「温室効果ガス25%削減」という高い目標を掲げた鳩山由紀夫首相がプレゼンターに加わったことで印象はさらに強まった。
その舌の根も乾かぬうちに「やっぱり2020年が最後の五輪かもしれない」とは確かにやりにくい。2020年には怜咲ちゃんも26歳だ。
知事は会見で、連続立候補について「この結果を都民、国民がどのように捉えるか。私たちが一方的に決めてかかるものじゃない」と民意を問う考えを表明。最低限の責任として約150億円という巨額の招致活動費の詳細を開示し、妥当性を明らかにするとした。
その一方で「せっかく見かけた夢ですから、いずれの時点か、日本ならではのオリンピックを東京に限らずどっかでやりたい」とも。
知事の理論でいけば地球滅亡を先送りするのが先決で、「いずれの時点か」などとのん気なことを言っている場合ではないのだが…。
◎石原知事男泣き
知事が珍しく「泣いた」ことを告白した。
「私は実は帰りの飛行機の中で泣きました。弾丸ツアーということで1泊3日(実際は1泊4日)の強行軍で来てくれた熱い心の見知らぬ同胞に『ありがとう。ごくろうさまでした』と放送するだけじゃ物足りないから機中を歩いた。みんなが拍手で迎えてくれて僕は初めて泣いたよ。見られたくなかったけど。熱い心の絆を感じて、不覚じゃない、とても気持ちのいい涙を流したな」
コワモテで知られる知事だけに、意外なエピソードだった。