大手生保は“おばちゃん部隊”による訪問販売が主流だが、近年はセキュリティー面から職場への訪問が制約される上、安さを強調する外資系などの新興勢力に押されてシェアを落としている。これに危機感を募らせた同社が別働隊を通じて、低価格商品分野に殴り込みをかける図式だ。格安航空会社(LCC)の生保版といえば話は早い。
計画によると、9月までに50億円で買収して社名を変更し、来年10月から保険販売を始める予定。奇しくも消費税が10%に引き上げられるタイミングだ。当然、国民のマネー感覚は敏感になる。そこへ第一弾として従来よりも2〜3割安い医療保険を投入すればインパクトは大きい。
しかし、メガバンク関係者は、ある点に注目する。
「第一生命、損保ジャパンは、ともにみずほグループの有力企業です。金融界ではかねてから、みずほ系の生損保が統合して巨大な“みずほ保険”が誕生するとの観測しきりでした。もともと芙蓉グループ(旧富士銀行)に属していた安田生命が、旧財閥の垣根を越えて明治生命と合併し、三菱グループの東京海上=明治安田生命となったことへの対抗との見立てです」
第一生命に負けず劣らず、損保ジャパンも生保の低価格商品に魅力を感じたからこそ子会社を設立したに違いない。しかも将来性は十分。それにもかかわらず、金の卵をわずか50億円で売却するのは、余程の事情があってのことだろう。
目下、みずほフィナンシャルグループはトラブル続きだけに、ここで一発汚名返上を画策しても不思議ではない。とはいえ、不祥事が打ち止めになる保証はサラサラないが。