最近では、この「先延ばしグセ」を克服するためのノウハウを紹介する書籍や、動画コンテンツなどが数多く生み出されており、この問題への関心の高さがうかがえる。先延ばしグセのある人は、適切な対処法を身に着ければ、QOLが飛躍的にアップするだろう。
テレビやYouTubeなど多くのメディアで活躍するメンタリストのDaiGoも、自身の動画や公式ブログで、人々が「先延ばし」をしてしまう原因について解説している。彼によると、「先延ばしグセ」をする人の多くは完璧主義を求めるあまり失敗を恐れ、目の前のやるべき課題から逃避してしまうことが原因だという。
では、この「先延ばしグセ」を克服するには、どのような行動をすれば良いのだろうか。先延ばしとモチベーション研究の第一人者である、カナダ・カルガリー大学ビジネススクールのピアーズ・スティール教授は、自著「ヒトはなぜ先延ばしをしてしまうのか」という著書の中で、先延ばしを克服するためのいくつかの行動プランを提示している。
最も手軽に行える手法としては、「脳内コントラスティング法」がある。これは理想の自分を思い浮かべ、それを現在の自分の状況と対比させることで、モチベーションを向上させるものだ。重要な点は、理想と現在の自分とのギャップを自覚しても楽観的でいること。悲観的になってしまう場合は、理想のハードルを下げる必要がある。
また、目標の設定は「回避目標」と言われる「何かを避ける」ための目標ではなく、「接近目標」と呼ばれる「何かを達成する」ための目標を設けたほうが効果的だという。例えば、仕事の企画書を作成する際には、「企画書の提出日に遅れない」という回避目標ではなく、「企画書を〇月〇日までに提出する」といった接近目標を設定したほうが良い。
ピアーズ教授はそのほかにも、目標達成まで期間中にいくつかの「サブゴール」を設定し、目標を細分化することでモチベーションを維持する方法も提案している。目標を細分化する際には、それぞれのゴールの内容を明確にしておかなければならない。先ほどの企画書の作成を例に挙げると、「〇月〇日までに市場調査を行い、〇月〇日までに現状と課題を整理、〇月〇日に上司に企画書を提出する」など、具体的な期間と達成するべき目標を細かく定めておくことが重要だ。実際にこの手法を運用する際には、ガントチャートを用いてスケジュールを管理したり、市販の手帳を用いて日々の進捗を管理するなど、設定したゴールに対する現在の状況を「可視化」する手法が有効だ。
それぞれのゴールを達成した際には、自分に報酬を与える「ご褒美効果」を用いると、次のゴールまでのモチベーションを維持することが期待できる。
効率が求められる現代社会、先延ばしグセのある人は、このような自己管理と向き合うための戦略がますます重要になってくることだろう。
記事内の引用について
Clarry H. Lay, Rosemarie Brokenshire.
Conscientiousness, procrastination, and person-task characteristics in job searching by unemployed adults.
ピアーズ・スティール著
「ヒトはなぜ先延ばしをしてしまうのか」
文:虚数パン