ヨーロッパで最大の経済大国と言われているドイツだが、意外にも人々の仕事の優先度は低い。日本にはまだ「寝る間を惜しんで働け」といった思想を持つ人も少なくないが、ドイツは「プライベートが充実してこそ仕事ができる」と考える人がほとんどだ。
まず、有給は必ず取得する。たいていの場合、年間30日の有給が与えられるが、有給を残す人はほとんどいないようだ。バカンスシーズンを迎えると、30日の有給を全て使って長期休暇を取り、家族や友達とイタリアなど暖かい気候の国で過ごす人も珍しくない。また、有給を消化していないと上司から指摘が入ることもある。とはいえ、年明けから夏の休暇の申請をする人が多く、有給を消化しない人の方が珍しい雰囲気なのだ。
さらに、「言われた以上の仕事はしない」というのもドイツ人ならではだろう。日本人は「向上心を持ってより良い仕事をしなければ」という社会風土があるが、ドイツ人は最初に決められた仕事以外はほぼしない。
日本とドイツの企業でそれぞれ働いた経験のある日本人は、「日本にいた時は、次の日のプレゼンのブラッシュアップのために、通常業務後にチームで集まりサービス残業で打ち合わせをすることが多かった。しかしドイツで同じことをしようとチームのメンバーに声をかけたら、『私の契約にそれは含まれていない』と拒否された。彼らは100%は目指しても120%は目指さないんです」と話す。
他にもドイツには、「仕事で無理をしない」という考えが根付いており、少しの風邪でも1週間ほど会社を休むことも珍しくない。しかも、病院で診断書をもらえば有給とは別で休めるのだ。休んだ日の給料も支払われる。多少の風邪であっても、頼めばほとんどの病院が診断書を出してくれる。また「家庭を守れない人は仕事もできない」という社会的な価値観があるため、家族の通院を理由に休む人も多い。会社側も、「無理して仕事をしても効率が悪いだけだから、万全な状態で来てほしい」という雰囲気がある。
ドイツでは、仕事とプライベートのバランスを上手に取っている人が多いようだ。日本でも今後、有給がさらに取りやすくなり、無理をしない働き方が広がっていくといいのだが。