鳥谷にはブルージェイズを筆頭に、パドレス、メッツ、ナショナルズなどが興味を示していたが、日本人内野手の米国内での評価は低く、水面下で出された条件は単年で、昨季年俸(3億円)を下回るもので、鳥谷側の希望に見合うオファーはなかった。
一方、阪神は4年以上の長期契約で、年俸は大幅アップの4億円程度を提示したともいわれる。米国と阪神の条件の差は明らかだった。
鳥谷には“凄腕代理人”のスコット・ボラス氏が付いている。ボラス氏は米国残留を希望していたともいわれる中島裕之内野手(32)とオリックスとの間に、破格ともいえる3年総額12億円の大型契約を成立させたばかり。
代理人の報酬は契約した金額のパーセンテージであり、ボラス氏が鳥谷に対しても、年俸の安い米国より、自身の実入りが多い阪神残留を指南したであろうことは容易に察しが付く。
青木宣親外野手(33)のように、ヤクルト時代より年俸が下がっても、夢を優先して、メジャーに挑戦した選手もいる。川崎宗則内野手(33)や田中賢介内野手(33)はマイナー契約でも、夢を追って海を渡った。
しかし、最終的に鳥谷は“金”を優先した。その年齢、阪神が用意する長期契約を考えると、残留はメジャー断念を意味する。それでも、鳥谷は夢を捨てて現実を取った。それは、ビジネスなら当然のことで、非難されるものではない。
阪神は鳥谷流出を想定して、中日ドラゴンズを戦力外となった森越祐人内野手(26)を獲得。もともと、内野手だった大和外野手(27)の遊撃再コンバート、西岡剛内野手(30)の外野転向も構想にあったが、それは白紙に戻った。
阪神球団、ファンにとっては、あきらめかけていた鳥谷が残ってくれたのは願ったりかなったりだ。
なお、ブルージェイズは鳥谷が残留を決めたことで、FAとなっていた川崎と再契約を結ぶ可能性が高くなったようだ。
※年俸は推定
(落合一郎)