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特選映画情報『アルキメデスの大戦』〜超大作でありながら小ネタが笑える“山本五十六”映画の秀作!

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提供:週刊実話

配給/東宝 TOHOシネマズ日比谷ほかにて公開
監督/山崎貴
出演/菅田将暉、舘ひろし、柄本佑、浜辺美波、田中泯、橋爪功ほか

 『三丁目の夕日』、『永遠の0』などの山崎貴監督が、お得意のCGなどを駆使した戦争超大作。珍しくボクも、三田紀房の原作コミックスを愛読しており、愛着があるためか、『永遠の0』よりはるかに面白かった。冒頭の“大和撃沈”シーンは大迫力スペクタクルの超大作なのに、意外や意外の小ネタが妙味で笑えたりもする。

 昭和8年、巨大戦艦建造計画を巡って、反対派の山本五十六少将(舘ひろし)は、百年に1人と呼ばれる天才数学者・櫂(菅田将暉)の頭脳を利用しようと陣営に引き入れる。櫂は、海軍のお歴々が居並ぶ“建造会議”で、この新型戦艦の重大な欠陥を指摘する…。

 主演の菅田将暉クンがテレビに出まくってPRに努めており、この“建造会議”で、複雑な数式と専門用語のセリフをまくしたてる彼の雄姿が話題になっている。彼はテレビドラマ『3年A組−今から、皆さんは人質です−』でもまくしたてていたから、もはや独壇場だろう。

 そこも確かに見せ場なのだが、俗なボクとしては、一番面白かったのが、推進派が櫂の女性関係を揶揄するシーンから脱線し、山本五十六と嶋田繁太郎(橋爪功)が、「深川の芸者が…」とか、「あんただってメカケが…」、とか、「それを言うか、貴様」と、やり合うくだり。今までの戦争映画での重要会議シーンで、見たこともない一種の“珍景”と言える。“山本五十六映画”は何本も観たが、愛人問題に触れた作品は、少なくともボクは今回が初めてだったで新鮮に映った。このくだりは原作コミックスにもちゃんとあるし。実際のところ、当時のお偉いさんに愛人は公然の秘密で、山本五十六も艶福家として知られ、2人の芸者との熱愛は有名だったという。他にも伊藤博文や渋沢栄一など、お札の顔になる人だって、お妾さんは当たり前の時代、功成り名遂げた者のステイタス。“妻妾同居”も珍しいことではなかったという。今なら大醜聞だろうけど。

 笑うというより、ゾッとしたのが、この会議の後、造船中将(田中泯)と櫂との悪魔に魅せられたようなやり取り。あれほど反対していた戦艦をつい美しいと思い、完成を夢想してしまう理数系の徒の矛盾や、造船中将が滅びの象徴として『大和』と命名することの皮肉。軍事兵器や戦争の魔力に人は抗いきれないのかと、あらためて思い知らされた。正統派の戦争超大作だが、異端の魅力も放っている。
 《映画評論家・秋本鉄次》

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