10月の3連休明け、プロ野球各球団からそんな声が聞こえてきた。ドラフト1位指名は当日(同28日)に決まるのが球界の慣例である。この先も二転三転するだろうが、斎藤佑樹(早大)の素質が再評価されている。
「もう1度、斉藤クンの4年間を整理してみたんです」(某球団スカウトマン)
斉藤の1位指名を公言しているのは、ロッテとヤクルト。それと同時に、「巨人が中央大学の沢村拓一投手に乗り換えた」との情報も交錯しており、ソフトバンクは地元・福岡出身の好投手、大石達也(早大)を指名するという。今秋のドラフト会議は大学生・社会人投手の当たり年であり、即戦力投手と評される逸材もかなり多い。そのなかにおいて、斉藤は“話題の中心”ではあったが、大学3年生のシーズンから調子を落とし、「実力、将来性では沢村、大石の方が上」との見方が支配的になってきた。
「斉藤の不振は(大学3年生以降)、投球フォームを崩したためです。投球フォームを崩した原因は分かっていました。何よりも、斉藤本人がそれを克服できたのが大きい。プロでも十分やって行ける」(前出・同)
同スカウトの「プロでやって行ける」発言は、「2ケタ勝利は必至」という意味である。
そもそも、斉藤が投球フォームを崩したのは『精神的理由』だった。
斉藤は150キロにこだわってきた。自己最速149キロは高校3年生の夏の甲子園でマークしたもの。つまり、『150キロ到達』は、高校時代の自分を超える“精神的葛藤”でもあったわけだ。
「大学3年生から150キロ越えの意識が強くなりすぎ、不振に陥ったんです。4年生最後の秋季リーグ戦で150キロ越えを果たし(開幕戦)、その後の登板では余計な力が抜けたというか、投球フォームが2年生当時に戻ったように見えました。『150キロの呪縛』から解放された」(同)
複数(複数球団)のスカウトも、同じようなことを話していた。
しかし、斉藤はプロ入り後、『技巧派投手』としての道を歩むことになりそうだ。150キロ越えを果たした秋季リーグ戦を見ても、直球の平均速度は140キロ台前半。相手打者の狙いをボール1つか、2つ分だけ外し、打ち損じを誘っていた。
「真っ直ぐでも(相手打者に)力負けしなくなりました。ただし、プロでは『投球フォーム』を少し改造することになるでしょう。スカウトが持ち帰った資料、映像を見た投手コーチも『短期間での改造可能』と判断しています」(球界関係者)
現在、日本のプロ野球を代表する好投手は、重量感のある速球を投げてくる。ダルビッシュ、涌井、田中、藤川、由規、前田、東野…。彼らの重量感のあるストレートは天性の素質であり、各スカウトは「コントロールと多彩な変化球を持つ」投手として、斉藤を育てようとしている。
「変化球投手は好不調に左右されることが少ないんです。調子が悪いなりに責任イニングを投げきれるタイプになるはずです。長いシーズンを戦うにあたって、そういう投手がいると大きな戦力になる。大学4年間で、1度も大きな怪我も故障もありませんでした。斉藤の安定感は凄い」(前出・スカウトマン)
繰り返しになるが、ドラフトの情報は当日まで、二転三転する。他投手がそれ以上の評価を得る可能性も捨てきれないが、ドラフトの主役はやはり斉藤で間違いなさそうだ。