楽天新監督・星野仙一氏(63)は今秋のドラフト会議において、阪神、楽天両球団に関わった。阪神のシニアディレクターから横滑りしたためだが、両球団とも、ドラフトの目玉・斎藤佑樹投手(22=早大/日本ハム)の指名を見送り、大石達也投手(22=早大/西武)の抽選に参加した。それは、星野氏の影響だという。
話は、9月17日に逆上る。その日、ドラフト会議の要項発表の記者会見が行われ、特別ゲストとして『北京五輪の仲良し3人組』が招かれた。3人組とは、星野氏と田淵幸一、山本浩二両氏のことだ。
「司会者はドラフトの関心を煽る意味もあって、斎藤クンのことを質問しました」(球界関係者)
田淵氏は「プロに入っていい思い出を作ってほしい」と言い、山本氏は「頭のいい投手だね。決め球の前に何を投げるかとか…。いい意味で完成された投手だと思う」と評した。両氏の人柄を感じさせるコメントだ。温厚な田淵氏は善し悪しを一切言わない。監督経験も豊富な山本氏は卓越された配球術を称賛していた。しかし、星野氏だけは違う言い方をした。
「打撃の良いチームなら、活躍できる」
当時、星野氏は楽天の監督候補に挙がっていなかった。山本氏は「阪神は(斎藤の指名を)狙ってるの?」と突っ込んだが、「今日はさ、阪神担当(の取材者)もたくさん来ているから」と言葉を濁したが、星野氏は斎藤を高く評価していなかったのである。
「打撃の良いチームに行けとは、それなりの失点も覚悟しなければならない投手という意味でしょう」(前出・同)
8月、9月のスポーツ報道を改めて見てみると、阪神が斎藤に強い関心を持っていたのは明白だ。出どころは「球団幹部」とされていたが、先発陣の柱となる投手を欲し、斎藤のゲームを支配できる投球術、大学4年間で1度も故障のない体調管理能力の高さを認める言動が報じられていた。
「星野氏は阪神内で、当時、少数派だった『斎藤回避論者』でした。スカウトの純粋な評価、つまり投手としての素質は大石、沢村、福井(優也=早大/広島)の方が上でしたが、斎藤クンには甲子園時代からの人気、集客力、そして、何か不思議な力もあったんですよね。素質を持った投手はほぼ毎年、出現します。でも、スター選手は10年に1人しか現れません…」(関係者)
“政治力”にも長けた星野氏は、トークショーとはいえ、「斎藤を酷評すればどうなるか?」も分かっていたはずだ。また、中日監督時代から投手を見る眼が優れており、それを否定するプロ野球関係者は1人もいない。
「沢村クンは巨人の一本釣りでした。彼の素質も素晴しいが、星野氏は『空振りの取れないストレートだ』と、大石クンの方が上だと評していました。楽天が大石クンの抽選に参加することを決めたのは、そのためです」(是移出・同)
即戦力投手の宝庫とも称された今秋のドラフトにおいて、社会人・大学生投手の明確なランキングをつけることができたのは、星野監督だけだという。楽天内部を窺えば、エース・岩隈久志投手が抜けると想定した穴はまだ埋まっていない。星野監督は内々に、外国人投手の調査を開始したとの情報も交錯している。大石投手に指名を集中させた仕掛け人でもある星野監督の眼力が正しかったのか否か、来季の楽天は優勝争い以外でも注目である。