「スチュワート投手は昨年、ブレーブスから契約金450万ドル(約4億9500万円)を提示されたが、身体検査で右手首に異常が見つかり200万ドル(約2億2000万円)に減額。これで交渉が決裂し、スチュワート投手は大物代理人のスコット・ボラス氏と契約し、東フロリダ州立短大に進学して今回のドラフトに備えていた」(スポーツ紙デスク)
そこに割って入ったのが、負傷者が続出し、急な戦力補強を迫られていたソフトバンク。かつて松坂大輔や田中将大を手がけたボラス氏の売り込みに乗り、ブレーブスが当初提示した条件に近い6年総額700万ドル(約7億7000万円)で獲得に漕ぎ着けたのだ。
まだプロで1球も投げていない新人にこれだけの巨額を投じるのは、確かにリスクがある。しかし、孫正義オーナーには、したたかな計算もあるという。
「日本のプロ野球界でトップ選手に育て、ポスティング・システムを使ってメジャーに売り付けるのです。そうすれば20億円の譲渡金が入り、十分に商売として成り立ちます。この間、ソフトバンクの戦力にもなり、一石二鳥。『第二のスチュワートを物色している』という怪情報も飛び交っています」(同)
ここで問題になるのが、日米の新人選手獲得の不均衡だ。日本の球団がアメリカのアマチュア選手を獲得することに、ルール上の縛りはない。
だが、日本には、2008年にドラフト1位指名候補の田澤純一投手が日本球界入りを拒んでMLB入りした際、「日本球界を経ずにMLB入りした選手は、日本に戻っても高卒選手は3年間、大卒・社会人は2年間、日本の球団と契約できない」という通称“田澤ルール”が存在する。
「この不均衡に目くじらを立てているのが、“アメリカ・ナンバー1主義”を掲げ、貿易摩擦の解消に躍起になっているトランプ大統領です。アメリカの優秀な若者が日本でプレーできるのに、日本人選手がメジャーでプレーすると、帰国時に条件が加えられる。これでは日米の経済に悪影響を与えかねないという。たかがベースボールとはいえ時期が時期だけに、関係者は不均衡の是正を迫られているのです」(在米ライター)
この“田澤ルール”さえなくなれば、高校卒業後に即メジャー入りを目指した菊池や大谷のような選手が多く出現するはず。楽しみは増えるが、同時にMLBに日本のトップアマチュア選手を総ざらいされる危険性も併せ持つ。
今回のソフトバンクの英断は快挙だが、日本球界存続の危機でもある。