これは、統一戦の前に取り決めた「勝者は10日以内に、どちらかの王座を返上しなければならない」とのルールに従ったもの。
あえて、3度防衛した愛着あるWBC王座を手放したのには2つの理由がある。まず、ライトフライ級に階級を上げて、2階級制覇を狙う際に、WBA王座を持っていた方が好都合であるため。井岡陣営ではすでに、WBA世界ライトフライ級王者のローマン・ゴンザレス(ニカラグア)への挑戦を視野に入れている。WBA王座を持っていた方が、転級しても、新たな階級で上位に世界ランク入りする可能性が高く、挑戦もしやすくなる。
もう1つは興行的な問題。井岡陣営は興行権を買い取り、井岡がいずれ返上するWBA世界ミニマム級王座の決定戦に、ジムの同僚であるOPBF(東京太平洋)ライトフライ級王者で、WBA同級2位の宮崎亮(23)を、階級を落として出場させたい意向であるため。井岡陣営が目指すのは井岡のライトフライ級王座挑戦とのダブルタイトル戦で、年内実現をもくろむ。
WBC王座を返上した井岡は「統一王者になった思い入れの深い階級だが通過点。統一王者として返上できるのは幸せなこと」と語り、階級を上げることについては「試合でのパフォーマンスも幅広くなり、自分のパワーを引き出せる」と自信を見せた。統一王者に満足することなく、井岡は新たなステップに挑む。
ところで、20日の井岡vs八重樫戦のTBS系列での視聴率(ビデオリサーチ調べ)は関東地区=18.2%、関西地区=22.3%の好視聴率をマークした。これは、井岡のこれまでの世界戦では過去最高。関東地区においては、その週(18〜24日)の地上波全番組(15分以上の番組)で7位だった。上位の番組は3位が「連続テレビ小説・梅ちゃん先生」(20、22、23日)。後の1、2、4、5、6位は日本列島を台風4号が縦断した19日夜のNHKのニュース番組だった。つまり、井岡の試合中継は同週の民放地上波では、ナンバー1の視聴率だったことが分かった。その週に台風が発生していなければ、もっと上位になっていたと思われる。
ボクシングの実力だけではなく、お茶の間の注目度もうなぎ上りの井岡。今後、ますます目が離せなくなってきた。
(落合一郎)