某食品メーカーの販売を担当するAさん(50)は、90キロの巨漢。おまけに美食家とくる。仕事が終わると同僚と深夜の街を徘徊する日々。人間ドックでは、高血圧の心臓肥大と診断された。
何しろ、最大血圧が200で最小血圧が100なのである。加えて、酔って爆睡していると、1分近く呼吸が停止していることがあると妻に指摘されてしまった。
このままでは命にかかわる…。そこでA氏は慌てて健康情報を集めた。
医療関係者が言う。
「肥満に高血圧だと、睡眠時無呼吸症候群を発症することがとても多いんです。あの横綱の白鵬もそうでした。お酒が好きな人だと余計になりやすい。あまり知られていませんが、睡眠時無呼吸症候群は、非常に心臓へ負担をかけます。カナダの研究では、1時間に20回無呼吸になる人を放置すると、10年以内に30%の人が脳卒中や心筋梗塞などの血管障害などで、亡くなるという報告が出ているほどです」
我々の体は、生きるために血圧を微妙に、また大胆に調整している。
「血圧を上げる最大の原因はストレスです。ストレスと闘うためには血圧を上げる必要があるからです。これは、体の合目的的反応と言えます。それなのに、薬で数値だけを下げてもかえって有害です。東海大医学部の大櫛陽一教授が'06年、福島県郡山市の検診データと全国の脳梗塞を起こした人のデータを比較して、高圧治療で脳梗塞の発症率が2倍になる可能性があると指摘しました。そもそも、脳卒中は死因の15%ですが、その内訳を見ると、脳梗塞84%、脳出血13%、クモ膜下出血3%で、脳出血が全死因に占める割合はたった2%なのです」(松本氏)
さらに松本氏が、心臓を健全な状態に戻す食生活について説明する。
「食生活の改善で肥大した心臓が元通りになるかどうかはともかく、かなり負担は軽くなるはずです。血圧を下げたいなら、摂取するカロリーを減らすことです。たとえば、バターピーナッツはカロリーが高く、20粒でご飯半膳分あります。アルコールは血圧とあまり関係ありませんが、ピーナッツをつまみにビールを飲んでいると、想像以上にカロリー過多になってしまう。それより、コンニャクやソラマメなどローカロリーの食品で飲んだ方がいい」
大事を取るあまり血圧降下剤を服用すると、別の疾患が生じる恐れがある。さらに、ストレスからくるヤケ食い、昼夜逆転の生活を繰り返していれば、高血圧も心臓肥大も治らない。不安を抱えてる人は、これを機会に、覚悟を決めて生活スタイルを変えてみては?