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キャバ嬢が生まれる瞬間(3)〜キャバ嬢に彼氏を取られた亜美奈の復讐心〜

 私がキャバ嬢になるなんて夢にも思ってなかった。すべての発端は過去に付き合っていた彼氏。私は高校を卒業後、美容師の専門学校へ入り、そこで技術を学んでいた。そんな時に友達に紹介されて付き合うことになった男がアキオ(仮名)。彼は私よりも4つ年上の映像編集マンだった。編集作業はとても過酷だったみたいで家に帰れない日も珍しくない。でもたまの休みには絶対会ってくれた。

 アキオはもっと私と会いたいからって映像編集の会社を辞めて一般のサラリーマンに転職。会える時間も増えて私達は幸せの絶頂だった。なのに付き合って3年が過ぎた頃、彼から突然こう言われた。

 「ごめん、キャバクラの子と付き合う事になった。別れてほしい」

 会社の付き合いで、月に何回かキャバクラに行っているのは彼から聞いてた。でも浮気じゃないし、ましてや本気になるなんて想像もしてなかった。今思えば地味で真面目だった彼がキャバクラに通うようになってから服装も派手になっていった気がする。

 キャバクラは擬似恋愛を提供する場所で、甘い言葉もすべては営業トークだと聞いたことがあったから、彼氏に「騙されているんだよ」って何度も泣きついたんだよね。でも完全に相手の女に洗脳されてるのか聞く耳は持ってくれないし、何か言っても「あの子はそんな子じゃない!」って言い返されるだけ。私があまりにしつこかったからそのうち彼は音信不通。2人がその後うまくいったかどうかも知らない。

 私はその頃、専門学校を卒業して美容師として働いていた。アキオの事は本気で好きだったから、別れてから何か月も泣き通す日々。ご飯も喉を通らなくなって、10キロくらい痩せた。彼と付き合った3年間はなんだったんだろうって。今となってはただの失恋なんだけど、当時は世界の終わりとばかりに精神的に落ち込んでしまって、勤めていた美容院もやめちゃった。

 それからしばらくして私はキャバ嬢の道へ入る。なぜ? って思われるかもしれないけど、私をここまで苦しめたキャバクラ嬢って一体どんな人種なんだろうとずっと気になってた。夜の世界なんてテレビや本の中でしか知らない。でもナンバー1になって私を捨てた彼氏を見返してやりたい、彼氏を取った女には負けたくない、そんな復讐心が私の中でメラメラと燃えたぎってた。

 まあ今更、彼氏とよりを戻す気もないし、彼氏を取ったキャバ嬢もどこの誰だか知らないから関わることもないだろう。でもこの世界に入ったからには本気でがんばるつもり。もしも彼氏が来店したら笑顔で接客してあげよう。お店の外では絶対会ってあげないけど。

(取材・構成/篠田エレナ)

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