しかし、「王様と私」は助演女優賞、ミュージカル衣装デザイン賞も含め4冠を達成。受賞には主演をつとめた渡辺の多大なる貢献があったが、今回、渡辺が演劇界では世界最高峰とも言える舞台に立つまではあまりにも山あり谷ありの俳優人生を歩んできた。
新潟県出身の渡辺は高校卒業後に上京し演劇集団「円」に入団。着実に演技力を磨き、84年に「瀬戸内少年野球団」で映画デビュー。87年にNHK大河ドラマ「独眼竜政宗」で主役を演じ一躍全国的な人気を獲得、スターダムにのし上がった。
ところが89年、映画初主演作となるはずであった「天と地と」の撮影中に急性骨髄性白血病を発症し降板。治療を続けて俳優復帰し、後に再発するも復帰。本格的娯楽時代劇シリーズドラマ「御家人斬九郎」や、「池袋ウエストゲートパーク」で新境地を開拓。02年に円を退団し大手芸能プロへの移籍を果たしてさらに活動の幅を広げた。
そして、外国映画初出演となったトム・クルーズ主演の03年公開「ラストサムライ」で「第76回アカデミー賞助演男優賞」、「第61回ゴールデングローブ賞助演男優賞」にノミネートされるなど高い評価を得たことで、「バットマン ビギンズ」、「SAYURI」など外国映画に立て続けに出演。ケン・ワタナベとして世界に羽ばたいたが、プライベートは目まぐるしかった。
「事務所移籍のあたりに、前妻の巨額の借金による離婚問題が発覚。離婚訴訟に発展し、高裁までもつれ、05年3月に離婚が成立。同時期に仕事で知り合い、“心の支え”となった女優の南果歩と同年12月に再婚した。離婚をめぐり、長男で俳優の渡辺大、長女で女優の杏との確執も報じられるなどしたが、大は結婚して渡辺にとっての初孫が誕生。杏は今年俳優の東出昌大と結婚した」(芸能記者)
そして今年、新たな挑戦となったブロードウェーミュージカルで世界最高峰の舞台に立ったが、ことごとく逆境をはね返して渡辺にしかできない演技で今後も日本を代表する俳優として飛躍しそうだ。