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怪談「下久保ダムそばの呪われた廃墟・“新井さん家”」

 「先輩が一人亡くなっていましてね…」

 秘湯の温泉旅館に宿泊した時。そこのご主人のYさんが語ってくれた。
 埼玉県と群馬県の県境に、下久保ダム(神流湖)がある。その付近に有名な心霊スポットの廃墟が存在する。それが“新井さん家”である。

 “新井さん家”については、奇妙な噂が色々と語られている。
 一家心中が二度ほど立て続けで起こった。

 ダム建設のためにやって来た新井さん一家の父親が突如精神を乱し、包丁や鉈で家族全員を殺害した後に自殺した。
 主人が夜逃げをした後、妻が頭から熱湯をかぶった上に橋から飛び降りて自殺した。
 “新井さん家”から何かを持ち帰ると、新井さんから「返せ!」と電話がかかってくる等々…。

 今からもう15年以上も昔のことである。当時、大学生のYさんは寮に入っていた。
 ある時、寮の友人や先輩たちの男ばかり8人で“新井さん家”に探索に行ったという。深夜、初夏の涼しい時期。人里離れた山奥にあるため、車で連れ立って向かった。

 やがて到着した“新井さん家”。鬱蒼とした木々や雑草に囲まれた中に建っていた。荒れ果て朽ちた臭いのする廃墟の中を、懐中電灯の明かりを頼りに進んで行く。

 しばらくすると、地面に描かれた白い人型が照らし出された。まるで検死で描く時のチョーク跡のようだ。そして、不気味なことに、辺りの壁には御札がたくさん貼られてあった。思わずぞっとした。突然、先輩の一人が、ふざけながら御札を引き剥がした上に、破り捨ててしまった。その瞬間、

 「うっぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ〜」

という女の物凄い絶叫が廃屋の中に鳴り響いた。その場にいた全員がはっきりと聞いたので、聞き間違いではなかった。急に恐ろしくなったYさん達は、“新井さん家”を飛び出ると慌てて車に乗り、逃げるようにして走り去った。

 “新井さん家”に行ってから、ちょうど1週間後のことだった。御札を剥がした先輩が交通事故で亡くなった。車同士の衝突事故で即死であった。先輩の死と、御札を剥がした件との因果関係は分からない。しかし、あの時“新井さん家”には5台の車で行ったのだが、奇妙なことに、その5台の車は次々と事故に遭い、1年以内に全部が廃車になったという。
 そして、なぜか寮の空気が異様に重く暗い雰囲気になり、幽霊が出ると騒がれるようになった。
 どうやら御札を剥がして死んだ先輩が、寮の中をさ迷っているらしい。その姿が度々目撃されるようになった。Yさんも真夜中の薄暗い廊下の向こうで淋しげに佇む先輩を見たという。

 下久保ダム(神流湖)の湖底には、ひとつの集落(310世帯)が水没している。近くにはダム建設での殉職者の慰霊碑もある。様々な人々の怨念が怖い噂や怪異を生み出しているのかもしれない。

(呪リンダ 山口敏太郎事務所)

参照 山口敏太郎公式ブログ「妖怪王」
http://blog.goo.ne.jp/youkaiou

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