これらノストラダムスの大予言は、一昔前にオカルト系雑誌で定期的に特集が組まれたり、日本では幾つかも解釈本が出版されました。その終末予言に恐怖をしながら、1999年を過ごした方も多かったのではないでしょうか。
ノストラダムスの大予言の中には、ナチスの独裁者ヒトラーを予言したといわれる項目を幾つか発見することができます。その中でも特に有名な詩は以下の通りです。
飢えに狂った野の獣が川を渡る
戦場の大半がヒスターに敵対するだろう
鉄の檻に指導者を引き込み
ゲルマンの子どもたちは法を守らなくなるだろう(2章24番)
ノストラダムスの大予言を最大限に利用したのがナチスドイツでした。1939年冬にベルリンの宣伝相官邸で、ゲッベルスは夫人のマグダからいきなり起こされたといいます。彼女はノストラダムスの予言詩集を手に、ある部分をゲッベルスに指し示しました。
英国の政策は七度変わりそして二百九十年間血に染まるだろう
独の支配から自由ではあり得ず
ポーランドは東方の焦点となる(3章57番)
詩を読んだとたんに、ゲッベルスはノスラダムスの予言を対外宣伝に使おうという着想を得ました。彼はスイス人の占星術家であるクラフトを雇い、ノストラダムスの注釈本『サロンの預言者』を1941年初めに完成させ、ドイツ占領下のブラッセルで印刷、出版させました。同解釈本は、ドイツ語から英語、イタリア語、スペイン語、フランス語、ポルトガル語に翻訳されてヨーロッパ各国に頒布され、ベストセラーとなりました。
ですが1942年にベルリンの宣伝省が爆撃で焼失すると、占星術のプロジェクトは立ち消えになり、後にクラフトは強制収容所内で病死したといいます。
当時の占星術家たちは既にヒトラーの運命を占星術で知っており、ルドルフ・へス副総統のイギリス単独飛行への報復として、1941年6月9日にそれを嫌ったナチスによって徹底的に弾圧されました。
ノストラダムスの予言を最大限に利用したナチスでしたが、ヒトラー総統の運命を変えることはできなかったのです。
(藤原真)