真王者がセルリアンブルーのマットを完全制圧した。
春のG1「ニュージャパンカップ(NJC)」を制したライバル棚橋を迎え撃った中邑。1・4東京ドームでベルトを奪った宿命の相手とのわずか3カ月足らずでの再戦となったが、その闘いぶりはチャレンジャーだった前回とは打って変わって、王者の風格を十二分に感じさせるまさに横綱相撲だった。
インサイドワークに長ける棚橋に先手を許す序盤戦にも、焦りは微塵(みじん)もなかった。幾度となく顔面を張られ、エルボーでほおを痛打。間髪入れずドラゴンスクリューで執ように左足を狙われようとも、強烈なミドルキックであっさり流れを断ち切る。試合巧者の棚橋を逆にあざ笑うかのようにすべてを受け止めた。
それでも15分過ぎにスリングブレイド2連発からダルマ式ジャーマンでマットにたたきつけられてピンチ到来。ついにはハイフライフローで圧殺されかけたが、カウント2・99で肩を上げてしのぐと最後は24分44秒、丸め込んできた棚橋の左腕を腕ひしぎ逆十字で伸ばしきり勝ち名乗りを聞いた。
強豪ひしめく春のG1を勝ち抜いてきた新日プロ最強挑戦者の棚橋でも、いまの中邑には一歩およばなかった。V2にして内政制圧を成し遂げた真王者。「新日本で最強の棚橋を倒した。あとは外に目を向けたい。世界でも他団体でも何なら自分が出ていっても構いません」と他団体防衛ロードを口にした上で「一番すげぇのは、プロレスなんだよ」と閉めた。
他団体出撃を示唆した中邑だが、その一方で新日プロは緊急事態に直面してしまった。菅林直樹社長は「正直、中邑選手が言うように棚橋選手を破ったことで現時点では新日本に挑戦者は見当たりません」と苦しい胸の内を吐露。それでも「4・27大阪大会で次のタイトル戦を行いますので、早急に次期挑戦者の交渉に入ります」と、外敵との大阪決戦開催を明らかにした。
暗礁に乗り上げた格好の4・27次期チャンピオンシップ。果たして1カ月足らずで挑戦者擁立はできるのか、真王者のV2達成はセルリアンブルーのマットに春の訪れとともに風雲急を告げる防衛となった。