物語の舞台は魔法が使える架空の世界で、魔導士達に仕事の仲介等をする組合「魔導士ギルド」が各地に存在する世界が舞台である。ギルドは人々の困った問題を解決する何でも屋のようなもので、ルーシィ達は受けた依頼を解決するために奮闘する。これら依頼の解決や闇ギルドとの戦いがストーリーの基本である。
タイトルの通り、ギルド「妖精の尻尾」が物語の中心に位置している。悪の魔王を倒すために主人公一行が旅を続けるという冒険物ではない。外部に冒険に行っても、それが終われば主人公達はギルドに戻る。毎回独立した依頼やイベントを繰り返す点が長期連載の要因である。
一方で、単発の依頼やイベントの繰り返しにはマンネリ化の危険がある。それを『FAIRY TAIL』では物語を主人公達の過去のエピソードに絡ませることで回避している。第三者が持ち込んだ依頼であっても、依頼内容が主人公達の過去のエピソードに何らかの形で関わってくることが多い。破天荒な「妖精の尻尾」の魔導士達も実は重たい過去を抱えている。依頼を解決していくことが、彼ら自身が過去と向きあうことになる。これによって物語に厚みを持たせた。
この巻では「妖精の尻尾」の聖地・天狼島で、「妖精の尻尾」が闇ギルド最強を誇る「悪魔の心臓(グリモアハート)」の攻撃を受ける。そこではナツと関係がありそうなゼレフや、マスター・マカロフと先代マスター、師匠ウルの死の原因となったグレイ・フルバスターとウルの娘・ウルティアと因縁の関係が目白押しである。同時並行するキャラクターの因縁に注目である。
(林田力)