「緒方監督は引退してすぐにコーチ業に転身するなど、将来の指揮官として期待されていました」(スポーツ紙記者)
そして昨年オフ、緒方監督は万を持して監督に就任した。しかし、その任期は1年だったことが判明した。
「緒方監督自身、一年一年が勝負ということでそういう契約になりました。フロントは3年以上やってもらうつもりでいましたが」(球界関係者)
だが、いまは当時から状況が変わりつつある。というのも、広島が近年、これほどまでに優勝を意識して臨んだシーズンはない。補強にも力を入れた。推定年俸100万ドルという、初年度では球団史上最高となる契約でヘスス・グスマン(31)を獲得した。そのグスマンが開幕で躓き、前年本塁打王のエルドレッド(35)の復帰が予定以上に遅れると分かるやいなや、前レンジャーズのネイト・シアーホルツ(31)を入団させた。シアーホルツは推定年俸116万2千ドルと、グスマンをさらに上回る年俸だった。
投手も黒田博樹(40)の帰還でローテーションの柱を手に入れた。FA宣言者を引き留めないという、本来は財布の紐の固い広島がここまで出資したのは、「今年逃したら、いつ優勝するんだ!?」の思いもあるからだろう。前年Aクラスの戦力に上積みをし、優勝の気運も高まっていたはずだった。しかし、気運も高額出資も勝ち星に繋がってこない。ここまではタブーとされていた緒方監督に対する批判も、チラチラと聞こえ始めた。
「緒方監督はマジメ。球場入りは早出特打ちの選手よりも早く、監督室にこもってデータを調べたり、VTRを観たり。番記者たちもこの熱心さを間近で見てきたから誰も批判しなかったんですが」(スポーツ紙記者)
緒方監督の采配が不味くて負けたという試合はほとんどないかもしれない。だが、現有戦力を使いこなせていないという見方が浸透しつつある。
「緒方監督は二軍コーチ時代、丸(佳浩=26)などの若手を指導してきました。壁にぶつかっている堂林(翔太=23)にも、結果が出ないのにチャンスを与え続けるなど、鬼になりきれない部分もある。どちらかというと、仕掛けて攻める監督ではなく、選手を信じて待つタイプです」(同)
また、黒田博樹の帰還が逆効果だったとも考えられる。黒田は全ての変化球のクオリティーが高い。よって、「打たれたら、捕手のリードが悪い」と考えがちになる。守っている野手陣にしても、 「黒田さんが投げる試合は勝たなければ」と妙な緊張感が走り、本来の力が発揮できないでいる。そのためか、黒田ほどの投手にもかかわらず、6勝4敗(7月21日時点)とあまり貯金を稼げずにいる。
こうしたチームの精神状態を上手にコントロールするのが監督の役目のはずだ。
「クライマックスシリーズ進出なら辛うじて続投。それを逃せば、緒方監督自身が責任を感じて辞表掲出なんてことにもなりかねない」(前出関係者)
球団が緒方監督という人材を大事に考えているのであれば、傷つかないように一度休養させる案が考えられなくはない。その際には、カープ女子を喜ばせ、目の肥えた地元ファンを納得させる必要がある。そのためには黒田兼任監督か、それとも前田智徳氏の登板か。緒方監督で優勝するのがベストなのだが、やむを得ないことがあるかもしれない。