角川と言えば、会議中に突然、床にへばりつき、地震を止めようとしたエピソードなどが有名だが、今回は、オーディションで薬師丸ひろ子や原田知世などの“金の卵”を発掘し、映画デビューさせた経緯を紹介した。当時、オーディションで原田を審査した際、周囲の関係者は合格させることに猛反対したそうだが、角川には「私を見て! 私を見て!」という「神の声」が聞こえたといい、角川は原田を『時をかける少女』のヒロインに抜擢。見事、映画を大ヒットに導いた。
また番組では“世紀の引き抜き”と言われる手塚治虫とのエピソードも放送。当時、テレビで見た手塚の顔色の悪さに気がついた角川は、彼と実際に会った際「お辛いんじゃないですか?」と声をかけた。手塚は連日、尿道結石による激しい痛みに苦しんでいたが、一切公表していなかった。にもかかわらず、角川はそれをテレビで見ただけで見抜いたのである。
さらに角川は「僕と握手してください。握手するだけで治ります」と言い、突然の握手。すると後日、手塚が病院に行くと、本当に病気が治っていたという。この件があったからこそ、手塚は自作『火の鳥』を角川書店に移籍させ、新作まで書き上げたとのことだ。
この時のことについて、角川は雑誌『コンティニュー』のインタビューでも「手塚さんは尿道結石だったんだよね。(略)『あなた死にますよ』ってハッキリ言ったら、手塚さんも『そう思います。どうすればいいですか?』『いや、握手するだけだ』って。それで握手して3日後に医者行ったら、二つの石がなくなって。それで『火の鳥 太陽編』を『野性時代』で連載することになったの」と当時を振り返っている。さらに同インタビューでは、エイベックスの現CEO・マックス松浦のインポテンツも治したと告白した。
「『悩みがある』って言うから、何かと思ったら『インポだ』って言うんだよ。(略)『じゃあ、お前、今晩からそういう気になるぞ』って言って握手したら、その日のうちにその気になって、彼女は作るわ、女房を妊娠させるわでね」
また松浦が両足の激痛に見舞われ動かなくなった時も、花瓶に刺してあったツツジを持って、祝詞をあげながら触ると治ったらしく、「角川さん、あなた何者ですか!?」と感謝されたという。
そんな、にわかに信じがたいエピソードを多く持つ角川だが、過去には、ある俳優を激怒させたことがあった。
90年に公開された映画『天と地と』で、角川がメガホンを取った時のこと。『爆報!THEフライデー』によると、主役の上杉謙信役で出演した榎木孝明に対し角川は、「お前の演技は素人の学芸会レベルだ!」「もう俳優やめちまえ!」と、具体的な理由を説明しないまま、何十回とNGを突きつけたという。この理不尽な状況に、榎木は「(腹が)煮えくり返って、俺を何だと思っているんだ、みたいなね。妄想の中では何回か殺しましたかね」と、当時のマジギレっぷりをインタビューで振り返った。
あれから28年、角川はこの件について口にした。当時の榎木は脚本の読み込みが足らなかったこと、そして「自分が空っぽになった時、本当に素のものが出てくる。“無になる”ということは入ってくる余地があるじゃない。謙信なら謙信が」と、あえて榎木の「素」を引き出すためにNGを出し続けたと真意を語った。そして番組で2人は再会し、榎木は「人生で数少ない本当の意味の恩人の一人だと思っています。この思いは一生続きます」と感謝の気持ちを口にし、角川と握手を交わしたのだった。映画の撮影を通じて、2人には固い絆が生まれたのだ。